慢性腎臓病と高齢者の要介護リスクが関連 運動習慣によるリスク低減の可能性も示唆 名古屋大学

慢性腎臓病 (CKD)は、進行すると人工透析や腎移植を必要とする末期腎不全となる。CKDの影響はそれにとどまらず、筋力低下、フレイル、日常生活機能の低下などから要介護リスクも高めると指摘されている。しかし、CKDと要介護リスクとの関連に関する研究はほとんど報告されていない。
そこで研究グループは、愛知県北名古屋市在住の高齢者(>64歳)8,428例を対象に、介護認定データと健診情報から、CKDリスクと要介護リスクとの関連を解析した。CKDリスクは血清クレアチニン値と尿タンパクの有無を組み合わせたKDIGO分類を用いて評価されている。
その結果、CKDリスクが高いほど要介護リスクが上昇することが明らかになった。正常群の5年要介護認定割合が7.9%であったのに対し、CKD中等度リスク群では10.1%、高リスク群では16.5%、超高リスク群では24.8%にまで上昇した。CKD超高リスク群では、5年間で実に4人にひとりが要介護状態になったことになる。
またCKDによる要介護リスクは、運動習慣(週2回以上、1回30分以上)がある集団では低減される傾向が示された。CKDなし運動習慣あり集団の要介護リスクを1としてCKD高リスク集団を見ると、運動習慣あり群では1.27であったが、運動習慣なし群では1.51、超高リスク集団では1.64から2.30へと増加している。
さらに、CKDリスクと要介護リスクにはJカーブ型相関がみられた。血清クレアチニン値が正常(男性0.9mg/dL、女性0.7mg/dL以下)な集団において要介護リスクが上昇していた。クレアチニンは筋肉の代謝で生じる老廃物であるため、筋肉量が少ない高齢者では腎機能が悪化していても見かけ上の血清クレアチニン値が低くなることによる。この結果は、見かけ上血清クレアチニン値が低いために潜在的なCKDが見逃されている高齢者が一定数存在する可能性を示している。こうした見逃しは、CKDに関連する要介護リスクの過小見積もりにつながるおそれがあり、血清クレアチニン値だけでなく、尿タンパク、シスタチンC、生活機能を含めた包括的な腎機能評価が必要だと示唆される。このことからも、筋肉量の維持を目的とした日常的な運動習慣が、要介護状態を防ぐセルフケアとして有用である可能性が裏付けられた。
本結果を受け研究グループは、「少子高齢化により金銭的・ 人的リソースが限られた現代日本において、より良い政策提言の一助となることが期待される」と述べている。
本研究は名古屋大学大学院医学系研究科 実社会情報健康医療学の助教 大橋勇紀氏、准教授 中杤昌弘氏、同大学医学部附属病院先端医療開発部の病院助教 杉下明隆氏、同大学院医学系研究科附属医学教育研究支援センターの 特任准教授 加藤佐和子氏、特任教授 水野正明氏(研究当時所属:同大学医学部附属病院先端医療開発部長)らの研究グループにより行われた。研究結果は、2025年11月21日付で国際雑誌『BMJ Public Health』に掲載されている。




