1型糖尿病患者にGLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬を使用 血糖や体重が改善 有害事象も
GLP-1RAやSGLT2iなどの比較的新しい薬剤は、2型糖尿病患者の低血糖リスクを増加させることなく血糖コントロールを改善し、かつ体重や心血管イベントを抑制して、さらにSGLT2iは腎機能低下や心不全入院のリスクも抑制することが明らかになっている。
これらの効果は1型糖尿病患者にとっても望ましいものであり、これまでにも複数の無作為化比較試験(RCT)が実施されている。それらのRCTからは、HbA1cや体重などに対する一定程度の上乗せ効果が報告されているが、いずれも介入期間が短くサンプル数も少ないため、長期的なリスク/ベネフィットが十分検討されているとは言えない。
一方、米国ではGLP-1RAやSGLT2iの1型糖尿病に対する使用は認められていないにもかかわらず、実臨床で適応外使用されているケースが珍しくない。2016年の時点で、米国内の26歳以上の1型糖尿病患者の約13%がインスリン製剤以外による補助療法を行っており、3%がSGLT2i、2.5%がGLP-1RAを使用していると推計されるとする報告もある。
このような状況を背景としてEdwards氏らは、同医療センターの患者データを用いた後方視的観察研究によって、1型糖尿病に対する補助療法としてのGLP-1RA、SGLT2iの有効性と安全性を検証した。
解析対象は、GLP-1RAまたはSGLT2iを90日超処方されていた成人1型糖尿病患者104人。GLP-1RAは76人、SGLT2iは39人に処方され、11人には両剤が処方されていた。平均処方期間は両剤ともに29.5カ月だった。
1年間の治療が行われた時点の評価で、GLP-1RAが用いられていた患者では、HbA1cの有意な低下(7.7%から7.3%、P=0.007)と、体重の有意な減少(90.5kgから85.4kg、P<0.001)が認められた。また、1日当たりの総インスリン投与量(61.8単位から49.9単位)や基礎インスリン投与量(30.7単位から26.0単位)も有意に減少していた(いずれもP<0.001)。
一方、SGLT2iが用いられていた患者ではHbA1cが有意に低下(7.9%から7.3%、P<0.001)し、1日当たりの基礎インスリン投与量が有意に減少していた(31.3単位から25.6単位、P=0.003)。体重(89.2kgから87.5kg、P=0.168)や総インスリン投与量(58.0単位から57.0単位、P=0.798)は有意な変化がみられなかった。
GLP-1RAとSGLT2iの比較では、体重の減少幅についてはGLP-1RAが用いられていた患者の方が大きく、群間差が有意だったが(P=0.027)、HbA1cやインスリン投与量の変動の群間差は非有意だった。
有害事象のために投与が中止されていたのは、GLP-1RAが処方されていた患者の26.9%、SGLT2iが処方されていた患者の27.7%だった。主な有害事象の発生率は、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)がGLP-1RAで3.9%、SGLT2iで12.8%、重症低血糖が同順に1.3%、2.6%だった。また、糖尿病に関連があるか否かにかかわらず、入院を要する事象が21.1%、28.2%、救急部門の受診が19.7%、7.7%に発生していた。
著者らは、「1型糖尿病患者に対するGLP-1RAまたはSGLT2iの使用は臨床上のメリットにつながる可能性がある。ただしSGLT2i投与にはDKAリスクの懸念があるため、慎重な投与対象の選択と経過観察が必要とされる」と述べている。
なお、1人の著者が複数の製薬企業との金銭的関係の存在を明らかにしており、それらの企業の一部は本研究に関連する医薬品を製造している。
[HealthDay News 2023年3月2日]
Copyright ©2023 HealthDay. All rights reserved.
Photo Credit: Adobe Stock