1型糖尿病患者へのGLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬の処方が米国で増加

2024.11.06
米国で1型糖尿病患者へのGLP-1RAやSGLT2i処方が増加

 米国で1型糖尿病(T1DM)患者に対するGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)やSGLT2阻害薬(SGLT2i)の処方が増加している実態が報告された。それらの薬剤が処方されている患者では、一般的なT1DMの患者像とは異なる特徴が認められるという。

 米エモリー大学ロリンス公衆衛生大学院のPiaopiao Li氏らの研究によるもので、結果が「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に10月23日、レターとして掲載された。

 米国では、T1DMに対するGLP-1RAやSGLT2iの使用は、過度な体重減少や低血糖リスク増大、正常血糖ケトアシドーシスなどの懸念のために認可されていない。

 しかし、これらの薬剤は減量や腎機能保護などの副次的効果を有するために、T1DMに使用した場合にもメリットがあると想定され、特に米国のような過体重や肥満者が多い環境ではそのメリットを受けることのできる患者が多い可能性もある。

 このような状況を背景としてLi氏らは、医療データベース(Epic Cosmos)を用いた検討を行った。

 Epic Cosmosには米国民の過半数に相当する約2億5700万人分の電子カルテ情報が登録されており、その2010~2023年のデータから、精度検証済みアルゴリズムによって94万3,456人のT1DM患者を特定した。

 主な特徴は、平均年齢41.5±20.6歳、女性49.5%、BMI27.5±7.0、HbA1c8.09±1.9%、肥満26.8%、慢性腎臓病(CKD)15.9%など。

 T1DM患者に占めるGLP-1RAが処方されていた患者の割合は、2010年は0.3%であったものが2023年には6.6%に増加し、SGLT2iについては0.1%から2.4%に増加していた。また、それら両剤のいずれかが処方されていた患者の割合は、0.7%から8.3%に増加していた。これらの増加はすべて統計的に有意な変化だった(傾向性P<0.001)。

 処方されたGLP-1RAを薬剤別に見た場合、セマグルチドの増加が最も顕著で、2018年の0.2%から2023年には4.4%となっていた。また米国で2022年に承認されたGIP/GLP-1受容体作動薬のチルゼパチドも、承認から1年以内に1.3%に達していた。

 GLP-1RAが処方されていた患者は、高齢(47.1±15.6歳)で女性が多く(63.2%)、BMIが高かった(35.0±7.51)。また肥満者の割合が高く(69.4%)、観察期間中にGLP-1RA処方の増加が最も顕著だったのは、肥満を有する患者だった。

 一方、SGLT2iが処方されていた患者は、高齢(56.8±15.1歳)で女性が少なく(44.7%)、BMIが高く(31.0±7.5)、またCKDを有する割合が高かった(26.9%)。観察期間中にSGLT2i処方の増加が最も顕著だったのは、心血管疾患を有する患者だった。

 著者らは、「T1DM患者に対するGLP-1RAまたはSGLT2iの有効性と安全性に関する前向き研究が求められる。そのエビデンスを得られるまでは、T1DM患者にこれらの薬剤を処方する際には注意を払う必要がある」と述べている。

 なお、数人の著者がバイオ医薬品企業との利益相反(COI)に関する情報を開示している。

[HealthDay News 2024年10月28日]

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