【新型コロナ】経口抗ウイルス薬「パキロビッド」が特例承認 糖尿病学会が注意喚起「併用禁忌薬が多数ある」

2022.02.16
 ファイザーは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する経口抗ウイルス薬「パキロビッドパック」(一般名:ニルマトレルビル錠/リトナビル錠)について、特例承認を取得したと発表した。厚生労働省と同社は、同剤200万人分を日本に供給するという最終合意書を締結している。

27日までは全国2,000の医療機関に限定し、院内処方で提供

 「パキロビッド」は、ファイザーが新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を標的に創製した新規化合物で、SARS-CoV-2のメインプロテアーゼ(3CLプロテアーゼ)を阻害することでウイルスの複製を抑制する。一方、リトナビルはSARS-CoV-2に対する抗ウイルス活性はなく、ニルマトレルビルの代謝を阻害し、その濃度を増加させる。

 日本も参加している国際共同第2/3相EPIC-HR試験では、外来治療の対象となる重症化リスクの高いCOVID-19患者で、同剤がプラセボと比較して、入院または死亡のリスクを89%(症状発現から3日以内)、および88%(症状発現から5日以内)、それぞれ減少させることが示された。また、有害事象の発現割合は同剤(23%)とプラセボ(24%)と同程度であり、おおむね軽度だったとしている。

 オミクロン株に効果が示唆される軽症から中等症向けの治療薬は、経口薬「ラゲブリオ(モルヌピラビル)」「パキロビッド(ニルマトレルビル/リトナビル)」、中和抗体薬「ゼビュディ(ソトロビマブ)」、抗ウイルス薬「ベクルリー(レムデシビル)」の4種類が揃うことになった。いずれも重症化リスクを有する患者が対象となる。

 一方、「パキロビッド」は2月14日から医療現場で投与が開始されているものの、高血圧や脂質異常症、睡眠障害の治療薬など、併用禁忌薬が多数ある。医師や薬剤師が処方や調剤を行ううえで、患者が服薬中のすべての薬剤を確認する必要があるため、27日まではCOVID-19に罹患した患者の診療を行う全国2,000の医療機関に限定し、院内処方で提供する方針となっている。

 厚生労働省では、「今後の展開を見据え、医療機関と連携可能な地域の薬局にもご協力いただくかたちで配送を含め、パイロット的取り組み行い、使用実績を積み上げてまいります」としている。

 日本感染症学会では「COVID-19に対する薬物治療の考え方 第13版」を2月10日付けで公開し、「パキロビッドパックは、リトナビルでCYP3Aにおける薬物代謝を阻害して薬剤の血中濃度を保つ薬剤であるため、CYP3Aで代謝される薬剤の血中濃度をほとんどの場合で上昇させます。カルシウム拮抗剤・スタチンなどが代表ですが、精神安定剤など多くの薬が影響を受けます。このため添付文書でも細かな併用禁忌・注意が設定されております。また、中等度の腎機能低下(eGFR 30mL/min以上60mL/min未満)では用量調整が必要となります」などと記述している。

 日本糖尿病学会では2月14日、「Paxlovidの特例承認について:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について」を公開し、同剤の効能効果について、次のコメントが添付文書に付けられていると注意を呼びかけている。
(1) 臨床試験での主な投与経験をふまえ、SARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有するなど、同剤の投与が必要と考えられる患者に投与すること。また、同剤の投与対象については最新のガイドラインも参考にすること。
(2) 重症度の高いSARS-CoV-2による感染症患者に対する有効性は確立していない。

日本感染症学会「COVID-19に対する薬物治療の考え方 第13版」
一般社団法人 日本糖尿病学会

パキロビッド

パキロビッドの概要(添付文書から一部抜粋)
製品名  パキロビッド®パック
一般名 ニルマトレルビル錠/リトナビル錠
効能又は効果 SARS-CoV-2による感染症
効能又は効果に関連する注意 ・臨床試験における主な投与経験を踏まえ、SARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有する等、同剤の投与が必要と考えられる患者に投与すること。また、同剤の投与対象については最新のガイドラインも参考にすること。
・重症度の高いSARS-CoV-2による感染症患者に対する有効性は確立していない。
用法及び用量 通常、成人及び12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、ニルマトレルビルとして1回300mg及びリトナビルとして1回100mgを同時に1日2回、5日間経口投与する。
用法及び用量に関連する注意 ・SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから速やかに投与を開始すること。臨床試験において、症状発現から6日目以降に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータは得られていない。
・中等度の腎機能障害患者(eGFR[推算糸球体ろ過量]30mL/min以上60mL/min未満)には、ニルマトレルビルとして1回150mg及びリトナビルとして1回100mgを同時に1日2回、5日間経口投与すること。重度の腎機能障害患者(eGFR 30mL/min未満)への投与は推奨しない。
製造販売承認取得日 2022年2月10日
製造販売元 ファイザー株式会社

パキロビッドパック 添付文書 患者向医薬品ガイド (医薬品医療機器総合機構)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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