【新型コロナ】男性39%、女性55%が「ゆううつに」 脳科学とAIを活用してメンタル改善 広島大学がプロジェクトを開始
これを受けて、広島大学は最新の脳科学の研究成果をふまえ、AI(人工知能)やデジタル技術を融合して、うつ病、依存症、児童虐待、自殺などの問題を解決するプロジェクトを立ち上げた。
コロナ禍で男性39%、女性55%が「ゆううつな気分に」
新型コロナウイルス感染症の拡大による不安、外出自粛、コミュニケーション不足、経済不安などにより、メンタルヘルスの悪化が懸念されている。
国連のアントニオ グテーレス事務局長は2020年5月に、コロナ禍により、うつ病・自殺・依存症・家庭内暴力などの急増が予測されるとし、各国政府にメンタルヘルス対策の強化を要請した。
日本でも自殺者数(とくに女性や子ども)の増加、ゲームやネットへの依存、家庭内暴力や虐待の増加が懸念されている。
そこで広島市では、2021年11月に市内在住の15歳以上の市民3,000人を対象に、こころの健康に関する調査を行った(回答数1,611人)。同市では、うつ病・自殺(自死)対策推進連絡調整会議が長年、うつ病・自殺対策を協議し、自殺者数が減少するなど一定の効果を上げている。
「広島市こころの健康に関するアンケート調査」の主な結果は次の通り――。
⚫ ゆううつな気分になることが増えた:男性39.1%、女性55.5%
新型コロナの流行により、ゆううつな気分になることが「増えた」と回答した人の割合は合計48.3%に上る。うち、中等度以上のうつ状態は17.2%、重症うつ状態は9.4%に上る。
⚫ 飲酒の量が増えた:男性の40歳代、50歳代で1割超
新型コロナの流行により、「飲酒の量が増えた」という人は合計7.0%だが、男性の40歳代で15.8%、50歳代で13.6%と1割を超えている。
⚫ 経済状態が苦しくなるほど、友人や相談相手が少ないほどうつ状態は増加
新型コロナが関連する、死にたいと思うほどの「悩みやストレス」の原因として、「経済・生活問題」を挙げた人が約2割に上る。また、相談相手がいない人では、「悩みやストレスがある」という人は約3割に上る。自殺対策として大切だと思うこととして「生活困窮者への経済的支援」を挙げた人は8割を超えている。
⚫ ゲームやネットの利用時間が増えた:男性・女性とも15歳~20歳代で60%以上
新型コロナの流行により、「ゲームやインターネットをする時間が増えた」という人の割合は29.9%。男女ともに年齢が若いほどその割合は高くなり、男性15~19歳、女性15~19歳、女性20歳代で6割を超えている。
デジタル革新、脳科学、AIでうつ病の問題を解決
こうした状況をふまえ、コロナ禍における社会課題を解決するために、広島大学脳・こころ・感性科学研究センターは、これまでに積み重ねてきた研究成果をもとに、急速に進展しているAI(人口知能)技術やデジタル技術を融合して、「メンタルヘルス デジタルトランスフォーメーション(DX)プロジェクト」を立ち上げることを発表した。
「メンタルヘルスDX」は、DX(デジタル革新)や脳科学、AIを活用して、うつ病、依存症、児童虐待、自殺などの問題を解決しようというもの。同プロジェクトでは、「コロナ禍でのメンタルヘルスDXの実現を目指す」としている。
同センターでは「メンタルヘルス対策は、フェイス トゥ フェイスによる相談、カウンセリングなどが主流でしたが、ウィズコロナ、ポストコロナ時代では、ソーシャルディスタンス、非接触、リモートなどを考慮したメンタルヘルス対策がニューノーマルとして求められています」と述べている。
同センターは、脳科学を中心に、医学、工学、情報科学、人文社会科学、脳機能計測・制御学などを融合し、「脳・こころ・感性」を探求する研究をしている。
これまで研究成果として、(1)機能的MRI(fMRI)とAI解析技術を用いたうつ病の層別化技術、(2)うつ病患者が自身の脳活動を制御してうつ症状を改善するニューロフィードバック技術、(3)脳波を用いた感性の可視化技術に基づくワクワク感メータなどを発表している。
広島大学 脳・こころ・感性科学研究センター
広島市こころの健康に関するアンケート調査結果(令和2年11月実施、広島市)
Identification of depression subtypes and relevant brain regions using a data-driven approach(Scientific Reports 2018年9月20日)
Antidepressive effect of left dorsolateral prefrontal cortex neurofeedback in patients with major depressive disorder:A preliminary report(Journal of Affective Disorders 20206月15日)
Quantification of anticipation of excitement with a three-axial model of emotion with EEG(Journal of Neural Engineering 2020年6月17日)