「テクノロジーが変える糖尿病診療」 第63回日本糖尿病学会年次学術集会レポート(5)
2020.10.20
第63回日本糖尿病学会年次学術集会
シンポジウム2「テクノロジーが変える糖尿病診療」
シンポジスト:Kazemi Mahmood R.(Global Medical and Scientific Affairs, Abbott Diabetes Care, USA)、西村理明(東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科)、川村智行(大阪市立大学大学院発達小児医学教室)、黒田暁生(徳島大学先端酵素学研究所糖尿病臨床・研究開発センター)、小出景子(永寿総合病院糖尿病臨床研究センター)、廣田勇士(神戸大学大学院医学研究科糖尿病・内分泌内科学部門)
座長:川村智行(大阪市立大学大学院発達小児医学)、松久宗英(徳島大学先端酵素学研究所糖尿病臨床・研究開発センター)
シンポジウム2「テクノロジーが変える糖尿病診療」
シンポジスト:Kazemi Mahmood R.(Global Medical and Scientific Affairs, Abbott Diabetes Care, USA)、西村理明(東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科)、川村智行(大阪市立大学大学院発達小児医学教室)、黒田暁生(徳島大学先端酵素学研究所糖尿病臨床・研究開発センター)、小出景子(永寿総合病院糖尿病臨床研究センター)、廣田勇士(神戸大学大学院医学研究科糖尿病・内分泌内科学部門)
座長:川村智行(大阪市立大学大学院発達小児医学)、松久宗英(徳島大学先端酵素学研究所糖尿病臨床・研究開発センター)
isCGMは糖尿病診療を効果的にモニタリングしてサポートする
糖尿病診療において、CSII(continuous subcutaneous insulin infusion:持続皮下インスリン注入)、CGM(continuous glucose monitoring:持続血糖モニター)、FGM(flash glucose monitoring)、SAP(sensor augmented pump:CGM機能を搭載したインスリンポンプ)などのテクノロジーが進化し、注目を集めている。本シンポジウムでは、先進デバイスを活用している臨床家と研究者が、先進デバイスの概要とエビデンス、今後の展望について講演された。 シンポジスト1人目のMahmood Kazemi氏は「The present and future of sensor-based glucose monitoring」と題して、CGMの測定指標、間歇スキャンCGM(intermittently scanned CGM:isCGM)の概要、データ解析手法とエビデンスを解説した。講演の後半にはisCGMを使用した試験の結果を複数報告し、isCGMと関連製品は糖尿病診療を効果的にモニタリングしてサポートするとまとめた。リアルタイムCGMは糖尿病患者の究極の自己管理用ツールになりうる
シンポジスト2人目の西村理明氏は「リアルタイムCGM」と題して、CGMの歴史、リアルタイムCGMの特徴・機能・使い方とエビデンスを詳細に解説した。リアルタイムCGMは直近に測定した血糖値を常に確認できることから、糖尿病患者の究極の自己管理用ツールとなりうると強調した。 西村氏は最後に、リアルタイムCGMを使用することが考慮される患者像を、継続的、短期的または間歇的のパターン別に提示した。その際、リアルタイムCGMはその機能が複雑かつ多岐に渡っていることから、十分に活用するためには、患者と医療者の両方に前向きに血糖変動を良くしようという熱意が必要であると述べた。インスリンポンプとSAP療法の進化は続く
シンポジスト3人目の川村智行氏は「インスリンポンプとSAP」と題して、小児におけるCSIIの普及状況、インスリンポンプの利点と欠点、パッチ式インスリンポンプの良い点と課題を詳細に解説した。インスリンポンプの欠点を補うパッチ式インスリンポンプが登場し、使用する患者は増え始めている。 川村氏は最後に、インスリンポンプとSAP療法に関して、クローズドループへの進化、パッチ式インスリンポンプの普及、注入回路チューブとシールの改良、CGMセンサーとチューブの一体化、コストの軽減化を望むと述べた。技術の進化には、深い知識と視点で考察することが必要
シンポジスト4人目の黒田暁生氏は「近未来の先進1型糖尿病医療」と題して、初めにボーラスウィザードを解説し、インスリンポンプを使用するにあたってボーラスウィザード機能は必須であると述べた。続いてスマートインスリンペン、i-Port Advance、ハイブリッドクローズドループ・インスリンポンプなど最新のデバイスと吸入インスリンの概要とエビデンスを紹介した。 黒田氏は、最近のインスリン治療の進化は目覚ましい。医療者はこれらの最新情報に常にアンテナを張り巡らせつつ、自らも進化していかなければならない。技術の進化によって医療が単純で楽になるのではなく、深い知識と視点で考察することが必要になるとまとめた。先進医療機器を利用した医療スタッフの役割は、患者主体の治療への移行を支援すること
シンポジスト5人目の小出景子氏は「先進糖尿病医療におけるチーム医療」と題して、長年取り組んでいるインスリンポンプやCGMデータを活用した療養支援であるDMS(データマネジメントシステム)指導の概要と効果、CGMの活用について詳細に解説した。 小出氏は最後に、糖尿病治療において先進医療機器を利用する際、医療スタッフの役割は、QOL、低血糖、血糖変動、HbA1cとグルコース指標の評価にかかわることであり、これらが医師主導から患者主体の治療への移行を支援することにつながるとまとめた。2型糖尿病患者を対象としたCGMのエビデンス構築が必要である
シンポジスト6人目の廣田勇士氏は「2型糖尿病への糖尿病先進デバイスの適応」と題して、CSII、リアルタイムCGMとisCGMに関する適応とそれぞれのエビデンスを解説した。 CSIIはより少ないインスリン量でHbA1c改善効果が得られる可能性があるが、エビデンスは不十分である。リアルタイムCGMは血糖自己測定(self-monitoring of blood glucose:SMBG)に対してHbA1c改善効果が大きい可能性があるが、低血糖軽減効果に関するデータは不足している。isCGMはSMBGに対して高血糖改善効果と低血糖減少効果がある可能性があるが、いずれも副次項目での評価にとどまっている。 廣田氏は、CGMは保険適応が変更されたことによって、2型糖尿病患者への適応が進むことが予想されるが、エビデンスは十分とは言えず、今後エビデンスを構築していくことが重要であるとまとめた。 一般社団法人 日本糖尿病学会 第63回日本糖尿病学会年次学術集会[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]