「糖尿病透析予防指導管理料算定と遠隔モニタリングを用いた看護支援の工夫と成果」 第25回日本糖尿病教育・看護学会レポート(4)

2020.10.05
第25回日本糖尿病教育・看護学会学術集会
政策委員会企画「糖尿病重症化予防に向けた取り組み-糖尿病透析予防指導管理料算定と遠隔モニタリングを用いた看護支援の工夫と成果-」
委員長:餘目千史(日本赤十字北海道看護大学看護学部)
委員:永渕美樹(佐賀大学医学部附属病院)、 森山美知子(広島大学大学院医系科学研究科)、 飯田直子(三咲内科クリニック)、 金子佳世(日本医科大学武蔵小杉病院)、 黒田久美子(千葉大学大学院看護学研究科)、 任和子(京都大学大学院医学系研究科)、 村田中(武蔵野赤十字病院)、 柳井田恭子(川崎市立井田病院)、 横山悦子(順天堂大学保健看護学部)、 古山景子(日本医科大学付属病院)、 水野美華(原内内科クリニック)、 肥後直子(京都府立医科大学附属病院)

糖尿病の重症化予防の推進と患者支援へのICTの利活用

 2020年の診療報酬の改定では、糖尿病に関しては「重症化予防の推進」と「医療におけるICTの利活用」にて追加が示された。具体的には、生活習慣病管理料において糖尿病患者に対して眼科受診奨励に関する要件が追加され、オンライン診療の算定患者に在宅自己注射指導管理料を算定している糖尿病患者が追加された。糖尿病の重症化予防に向けた取り組みが強化され、在宅でインスリン療法を行っている患者の支援にICTを活用することが明示されたと言える。

 しかし、糖尿病透析予防指導管理料が開始されて約8年経過するが、算定数は依然として増加していない。透析予防指導の件数が増えない理由として「医師からの指示がない」「看護師のマンパワー不足」「3職種が同日算定のシステムが組みにくい」などが挙げられている。政策委員会が実施した調査から、これらの課題に対して各施設で工夫して取り組んでいることが明らかになった。

 また、2018年より可能となったオンライン診療の算定は、患者と医師の間で診療が行われた際に算定され、看護師が行う遠隔モニタリングを用いた支援行為では認められていない。しかしICTの発展とともに遠隔モニタリングを用いた血糖調整などの看護支援の可能性は広がっていくことが予想される。

 糖尿病透析予防指導管理料の算定や遠隔モニタリングの支援に関して意見交換を行うことによって、皆さんの今後の看護支援のヒントとなれば幸いである。

透析予防指導件数を増やす工夫を共有し、糖尿病の重症化予防につなげる

 最初に、森山美知子氏が「糖尿病重症化予防の概要と地域テレナーシングの実践」と題したミニレクチャーを行った。厚生労働省が示す医療費適正化計画において、医療保険者2に対して医療機関と連携して糖尿病性腎症の重症化予防に取り組むことが義務化され、医療機関に対して診療報酬(糖尿病合併症管理料、糖尿病透析予防指導料)が設定され糖尿病患者への療養指導が強化された。さらに2020年からは市町村において高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施が義務づけられた。また医療保険者に提供されている疾病管理プログラムにおいてはテレナーシング(遠隔看護)3が取り入れられている。広島大学発のベンチャー企業が2010年から全国の医療保険者に疾病管理プログラムを提供し、同様の医療保険者に疾病管理プログラムを提供する会社が全国に拡大していることを紹介した。

 続いて糖尿病透析予防指導の取り組み事例が紹介された。

 1つ目は「地域と連携した透析予防の実践」と題して、永渕美樹氏が佐賀県における透析予防指導が必要な対象者をリストアップして透析予防指導につなげるストップ糖尿病対策事業と専門医療機関での取り組みを紹介した。佐賀県では行政、医師会、糖尿病専門医療機関が連携して、糖尿病の重症化予防に取り組んでいる。その取り組みを進めることによって糖尿病透析予防指導管理料の算定が増え、さらに理想形の地域と連携した透析要望指導に近づいているとまとめた。

 2つ目「第4期まで支える糖尿病透析予防指導の実践」では、肥後直子氏が透析予防指導の件数が増えない理由に対する京都府立医科大学附属病院での工夫を紹介した。繰り返し継続指導をすることによって患者との人間関係が作りやすく、透析予防指導の時間短縮、患者の心理に寄り添った看護につながると述べた。

 3つ目「糖尿病透析予防指導管理料算定と遠隔モニタリングを用いた看護支援の工夫と成果」では、水野美華氏が糖尿病患者に対して遠隔モニタリングを行う際に活用できるシステムやスマートフォンアプリの機能や利点について紹介した。導入事例を挙げて、低血糖と高血糖を把握して早期対処ができる、シックデイなどでの早期対処ができる、患者と医療者がデータを共有できる、患者が来院する前にアセスメントや治療計画を検討できるなどのメリットを示した。

 講演の後には、「かかりつけ医との連携において、どのようにかかりつけ医を巻き込んだのか」「第4期以外で繰り返しの指導が効果的な事例はあるか」「遠隔モニタリングに要する費用はどうしているのか」などの質疑応答が行われた。

1 ICTはInformation and Communication Technologyの略称で、通信技術を活用したコミュニケーションを表す言葉。
2 医療保険者とは医療保健事業を運営するために保険料(税)を徴収し、保険給付を行う実施団体を示す。
3 テレナーシングとはICTを用いて患者と看護師が対面せずに看護を提供することを示す。

第25回日本糖尿病教育・看護学会レポート

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