米国糖尿病学会が新ガイドラインを発表 糖尿病腎症の推奨を更新 SGLT2阻害薬を評価

2019.06.12
第79回米国糖尿病学会年次学術集会

 米国糖尿病学会(ADA)は6月3日に2019年版「Standards of Medical Care in Diabetes」を発表。4月14日に「New England Journal of Medicine」に掲載されたCREDENCE試験からの知見にもとづき変更を加えた。詳細は6月に開催された第79回米国糖尿病学会年次学術集会で発表された。

糖尿病腎症の2型糖尿病患者ではSGLT2阻害薬を検討

 ADAによると、SGLT2阻害薬によるリスクとベネフィットのプロファイルは、2型糖尿病と慢性腎臓病(CKD)のほとんどの患者にとって好ましもので、カナグリフロジンにより糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)のリスク増加が認められたものの、下肢切断、骨折、急性腎障害、高カリウム血症のリスク増加は認められなかった。

 2型糖尿病の有病率上昇を背景に、腎不全患者は世界的に増加傾向にあり、人工透析を必要とする患者は2030年までに2倍に増えると推測されている。2型糖尿病の腎保護にはRA系阻害薬が使用されているが、それ以外に有効性を示したものは少なく、SGLT2阻害薬の有効性が認められた意義は大きい。

 ADAは臨床医に以下を行うことを推奨している――。

・ 尿中アルブミン(尿中アルブミン/クレアチニン比)が高値、および罹病期間が5年以上の2型糖尿病患者および1型糖尿病患者に対し、年に1回以上の推定糸球体濾過率(eGFR)を評価する。

・ 腎症の進行および心血管イベントのリスク低減のために、eGFRが30mL/min/1.73m²以上で、アルブミン尿が300mg/gを超える糖尿病腎症の2型糖尿病患者では、SGLT2阻害薬を使用することを検討する。

・ 慢性腎臓病(CKD)患者では、アルブミン尿の進行および心血管イベントのリスク低減のために、GLP-1受容体作動薬の使用を検討する。

・ 細小血管合併症およびフットケアに関しては、CREDENCE試験後に削除された推奨を回避する。

 CREDENCE試験は、2014~2017年に日本を含む34ヵ国690施設で2型糖尿病患者4,401例を対象に実施された。尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)300mg/gCr以上、推算糸球体濾過量(eGFR)30~90mL/分/1.73m²の患者をSGLT2阻害薬カナグリフロジン(1日100mg)投与群とプラセボ投与群に無作為に割り付けし、 中間報告では中央値2.62年を追跡した。

 カナグリフロジン群では、末期腎不全(ESRD)、血清クレアチニンの倍化、腎臓または心血管疾患による死亡という複合リスクが30%低下することが示された。副次評価項目であるESRD、血清クレアチニンの倍増、および腎疾患による死亡という腎疾患関連の複合アウトカムも34%低下した。

 なお、ADAの新しいガイドラインでは、SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬による心血管イベントの抑制効果は、心血管疾患の低リスク者では微小とされている。

Standards of Medical Care in Diabetes--2019 Abridged for Primary Care Providers(Clinical Diabetes 2018年12月)
American Diabetes Association Issues Critical Updates to the 2019 Standards of Medical Care in Diabetes(米国糖尿病学会 2019年6月3日)
Canagliflozin and renal outcomes in type 2 diabetes and nephropathy(N Engl J Med 2019年4月14日)

関連情報

糖尿病・内分泌プラクティスWeb 糖尿病・内分泌医療の臨床現場をリードする電子ジャーナル

尿病関連腎臓病の概念と定義 病態多様性 低栄養とその対策
小児・思春期1型糖尿病 成人期を見据えた診療 看護師からの指導・支援 小児がんサバイバーの内分泌診療 女性の更年期障害とホルモン補充療法 男性更年期障害(LOH症候群)
神経障害 糖尿病性腎症 服薬指導-短時間で患者の心を掴みリスク回避 多職種連携による肥満治療 妊娠糖尿病 運動療法 進化する1型糖尿病診療 糖尿病スティグマとアドボカシー活動 糖尿病患者の足をチーム医療で守る 外国人糖尿病患者診療
インクレチン(GLP-1・GIP/GLP-1)受容体作動薬 SGLT2阻害薬 NAFLD/NASH 糖尿病と歯周病 肥満の外科治療 骨粗鬆症 脂質異常症 がんと糖尿病 クッシング症候群 甲状腺結節 原発性アルドステロン症
エネルギー設定の仕方 3大栄養素の量と質 高齢者の食事療法 食欲に対するアプローチ 糖尿病性腎症の食事療法
糖尿病薬を処方する時に最低限注意するポイント(経口薬) GLP-1受容体作動薬 インスリン 糖尿病関連デジタルデバイス 骨粗鬆症治療薬 二次性高血圧 1型糖尿病のインスリンポンプとCGM

医薬品・医療機器・検査機器

糖尿病診療・療養指導で使用される製品を一覧で掲載。情報収集・整理にお役立てください。

一覧はこちら

最新ニュース記事

よく読まれている記事

関連情報・資料