SGLT2阻害薬が糖尿病による腎臓病の進行を抑制 新たな機序を解明

 糖尿病治療薬のSGLT2阻害薬に、血糖値を下げる効果に加えて、腎臓を保護する作用があることが、京都府立医科大学の研究で明らかになった。SGLT2阻害薬は、特に腎臓の中の酸素不足を改善し、酸化ストレスを改善し腎臓のダメージを抑えるという。
SGLT2阻害薬の糖尿病腎症の進行を予防する効果
 京都府立医科大学の研究グループは、SGLT2阻害薬「イプラグリフロジン」に糖尿病による腎臓病を抑制する効果があることを、マウスを用いた実験で確認した。SGLT2阻害薬は、腎臓での酸化ストレスの改善、腎臓内の糸球体への過剰な負担の軽減、腎臓内の酸素状態の改善など、複合的な作用をするという。

 糖尿病腎症は糖尿病の3大合併症のひとつで、血液透析導入の原因疾患の第1位となっている。透析医療は負担が大きく、治療に必要な時間が長いなど、患者のQOL(生活の質)を大きく低下させる。医療費への影響も考慮すると、その対応は急務だ。しかし、糖尿病腎症による慢性腎不全の進展を防ぐ治療法は乏しいので、効果的な治療法の開発が望まれている。

 SGLT2阻害薬は、腎臓からブドウ糖を排泄させることで血糖値を下げる作用をする糖尿病治療薬。日本では2型糖尿病を効能・効果として使われている。糖尿病の患者に対して、SGLT2阻害薬を用いた臨床試験では、心筋梗塞や脳卒中などの動脈効果に起因する疾患の発症を抑制しただけでなく、尿タンパクの減少や腎機能の悪化を防ぐなど、糖尿病腎症の進行を予防する効果も認められている。

 しかし、SGLT2阻害薬による腎臓の機能を守るメカニズムについては不明な部分が多く、研究グループは、マウスを用いた実験により解明を試みた。
腎臓の糸球体と尿細管での酸化ストレスを減らす作用
 今回、研究グループは、SGLT2阻害薬「イプラグリフロジン」を糖尿病マウスに2ヵ月間、毎日投与した。その結果、血糖値は同剤の投与により低下し、糖尿病腎症の病状の指標である尿タンパク量を改善した。

 糖尿病腎症では、血糖値が高くなることで身体の中の酸化ストレスが上昇していることが知られているが、今回の実験では、イプラグリフロジンが腎臓の糸球体と尿細管における酸化ストレスを減らすことを確かめた。

 また、糖尿病患者では、糸球体の機能が過剰に働くことで、結果的に腎機能の悪化を早めることが知られている。イプラグリフロジンは、この糸球体の過剰な働きを抑える効果もみられた。

 尿に排泄されたブドウ糖は再び身体の中に吸収される。糖糖尿病腎症では、尿にブドウ糖が多く排泄され、より多くのブドウ糖が再び吸収されることで大量のエネルギーを消費しており、結果として腎臓内の酸素が不足する。イプラグリフロジンには、尿に含まれる糖が再び身体の中に戻るのを防ぐ作用があり、腎臓内の酸素状態を改善したとみられる。
糖尿病による腎臓病を軽減
 今回の研究成果について、研究グループは「今回の研究成果は糖尿病性腎症が進行する仕組みを解明するとともに、SGLT2阻害薬が糖尿病性腎症による慢性腎臓病の進展を抑制する機序を示した。今後は同薬が多くの患者に広く用いられることで、糖尿病による腎臓病が軽減され、結果として糖尿病腎症による透析患者数が減少することが期待される」と述べている。

 この研究は、京都府立医科大学大学院医学研究科腎臓内科学の亀﨑通嗣氏、草場哲郎氏、および循環器内科、糖尿病内科の共同研究グループによるもので、科学雑誌「Scientific Reports」に発表された。
京都府立医科大学大学院医学研究科腎臓内科学
Comprehensive renoprotective effects of ipragliflozin on early diabetic nephropathy in mice(Scientific Reports 2018年3月5日)
[Terahata]
編集部注:
  • 海外での研究を扱ったニュース記事には、国内での承認内容とは異なる薬剤の成績が含まれています。
  • 2012年4月からヘモグロビンA1c(HbA1c)は以前の「JDS値」に0.4を足した「NGSP値」で表わすようになりました。過去の記事は、この変更に未対応の部分があります。ご留意ください。
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