糖尿病ネットワークがベトナムに進出 アジアの糖尿病医療を底上げ
2018.12.04
ベトナムの糖尿病人口は10年間で2倍に増加
糖尿病は患者や家族の生活の質に深刻な打撃を与える疾患だ。糖尿病の負担が拡大しているのは、日本だけの話ではない。ベトナムでは糖尿病有病数が急速に増えており、この10年間で2倍になっている。 ベトナムの2017年の糖尿病有病数は354万人(有病率 5.5%)。糖尿病予備群とされる耐糖能異常(IGT)の数は479万人(7.4%)。7.5人に1人が糖尿病かその予備群だ。2045年までに糖尿病有病率は7.7%に上昇すると予測されている。 糖尿病が爆発的に増えている背景として、糖尿病に対する意識が薄く、十分な知識が普及していないことがあげられる。ベトナムでは糖尿病有病者の半数以上(53%)の189万人が糖尿病と診断されておらず、治療を受けられていない。「糖尿病3分間ラーニング」がベトナムでも人気
「糖尿病の知識(Kiến thức tiểu đường)」と題されたサイトは、ベトナムで圧倒的に不足している糖尿病についての知識を、ベトナム全国に広げることを目的に、OmiMedical社が公開している。 「糖尿病ネットワーク」のコンテンツをベトナム語に翻訳したものが使われており、▼糖尿病の病態、▼検査、▼糖尿病合併症、▼治療と予防、▼生活スタイルの改善の必要性などについて解説している。 中心となるのは、糖尿病ネットワークでも好評を得ている「糖尿病3分間ラーニング」だ。このコンテンツは、糖尿病患者がマスターしておきたい糖尿病の知識を、テーマ別に約3分にまとめた新しいタイプの糖尿病学習用動画。スマートフォン、タブレット端末、PCなどから、気軽に場所を選ばずアクセスでき、糖尿病の多様な知識を学ぶことができる。 日本でも閲覧回数が240万回を超えている定番コンテンツである「糖尿病3分間ラーニング」は、ベトナムでも爆発的な人気を得ているという。ベトナムの糖尿病対策
糖尿病は進行すると、腎臓病、網膜症が原因の失明、足の切断の原因となる潰瘍・壊疽、心血管疾患、脳卒中などの深刻な合併症を引き起こす。ベトナムでは年間に5万人以上が糖尿病が原因で死亡している。 ベトナムは高い経済成長を遂げており、それに合わせて生活スタイルの欧米化が進んでいる。ベトナムの伝統的な食事スタイルは、薄味で低カロリー、健康的なものが多かったが、この10年間で高カロリー・高脂肪のものに変わっていった。都市化が進み、運動不足も増えている。 医療格差も拡大している。医療機関は都市部に集中しており、地方では十分な検査や治療を受けられない。また、医療スタッフの多くが糖尿病治療の訓練を受けていない。 糖尿病を克服するために、草の根レベルでのサーベイランスの強化、一次・二次予防の強化、保健システムの強化が必要とされている。ベトナム政府は、糖尿病を含む非感染性疾患(NCD)に対策するため、2015年間から全国規模の戦略を展開している。アジアの途上国の糖尿病医療を底上げ
ベトナム保健省は、糖尿病の治療を受けられる地域の医療機関を増やし、国民の健康的な生活習慣を促進するために健康啓発キャンペーンを開始したが、これまでのところ十分な成果を得られていないという。 糖尿病による負担は深刻だ。WHO(世界保健機関)によると、ベトナムの糖尿病患者1人あたりの糖尿病による経済的な損失は年間1万8,000円(162.7ドル)なのに対し、ベトナム人の平均的な年収は1万7,000円(150ドル)だ。糖尿病による負担を減らすために、糖尿病の一次予防・二次予防が必要とされており、そのために適正な知識が欠かせない。 ベトナムを含む西太平洋地域の糖尿病人口は1億5,900万人で、2045年には1億8,300万人に増えると予測されている。「糖尿病ネットワーク」は、アジアの途上国の糖尿病医療の底上げに役立つと期待されている。 糖尿病3分間ラーニング(糖尿病ネットワーク)Kiến thức tiểu đường
IDF 糖尿病アトラス(国際糖尿病連合)
[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]