SGLT2阻害薬「ジャディアンス」 EMPA-REG OUTCOME試験のアジア人サブグループ解析の結果を発表
2017.02.06
SGLT2阻害薬「ジャディアンス」の「EMPA-REG OUTCOME」試験における心血管アウトカムならびに全死亡のリスクの減少は、アジア人においても認められ、その結果は全体集団の結果と一貫していることが確認されたと発表された。
心血管イベント・心血管死・全死亡のリスクを減少
アジア人においても確認
日本ベーリンガーインゲルハイムと日本イーライリリーは、「ジャディアンス」(一般名:エンパグリフロジン)による「EMPA-REG OUTCOME」試験のアジア人サブグループ解析の結果が、「Circulation Journal」に1月25日付けで掲載されたと発表した。
糖尿病患者は、糖尿病に罹患していない人と比較して、心血管疾患を発生するリスクが2~4倍高く、2015年に糖尿病で死亡した全世界の500万人のうち2型糖尿病患者の約50%は心血管疾患が原因だったという報告がある。
「EMPA-REG OUTCOME」試験では、心血管イベントの発症リスクが高い2型糖尿病患者において、標準治療にジャディアンスを上乗せ投与した結果、プラセボ投与群と比較して、主要評価項目である複合心血管イベント(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中)のリスクを14%有意に減少。心血管死リスクを38%、全死亡のリスクを32%それぞれ有意に減少させたことが既に報告されている。
一方で、2型糖尿病の有病率、特に心血管イベントリスクには人種差があることが報告されているため、さらなる解析として、EMPA-REG OUTCOME試験に参加したアジア人2型糖尿病患者1,517人(全体集団の22%)における心血管アウトカムの解析が行われた。
その結果、アジア人集団における複合心血管イベント(心血管死・非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中)に関して、「ジャディアンス」投与群は、プラセボ投与群に比べ、複合心血管イベントのリスクを32%減少(ハザード比 0.68、95%信頼区間 0.48-0.95)させることが明らかになった。
また、心血管死のリスクは56%減少し(ハザード比 0.44、95%信頼区間 0.25-0.78)、全死亡のリスクは36%減少した(ハザード比 0.64、95%信頼区間 0.40-1.01)。
ジャディアンスの心血管アウトカムならびに全死亡のリスクの減少はアジア人においても認められ、その結果はEMPA-REG OUTCOME試験全体集団の結果と一貫していたという。
また、アジア人集団における有害事象の割合は、プラセボ投与群で26.6%(136/511例)、ジャディアンス10mg群で27.1%(137/505例)、25mg群で28.5%(143/501例)に認められた。主な有害事象として、低血糖がジャディアンス10mg群で26.5%(134/505例)、25mg群で24.2%(121/501例)に認められたという。
日本での血管イベントのリスク減少に関する適応承認は未定
SGLT2阻害薬「ジャディアンス」については、2016年12月に米国食品医薬品局(FDA)が、心血管疾患を有する成人2型糖尿病患者に対する心血管死のリスク減少に関する新たな適応を承認した。 また、欧州では、2016年12月に医薬品評価委員会(CHMP)が採択したジャディアンスの心血管死のリスク減少に対する肯定的見解にもとづき、2017年1月に欧州委員会(EC)が、同剤の心血管死のリスク減少に関するデータを含む添付文書の改訂を承認した。 なお、日本における「ジャディアンス」の効能・効果は2型糖尿病であり、心血管イベントのリスク減少に関連する効能・効果の適応は取得しておらず、今後の承認取得については未定だという。[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]