1型糖尿病患者さん「恋人ができるまで」 インスリンとの歩き方
1型糖尿病患者の遠藤伸司さんによる連載「インスリンとの歩き方」は、第14回「恋人ができるまで」を公開しました。連載「インスリンとの歩き方」へ ▶
執筆者の遠藤さんは、中学生の頃に1型糖尿病を発症。以来、約30年間の療養生活の中で、留学や進学、就職、そして転職、プライベートまで幅広い経験を積み、なにかと無理をすることもあったようです。
連載では、そんな遠藤さんの半生を、糖尿病と上手につきあうためのコツやノウハウを中心に、実体験のエピソードを交えて語っていただきます。1型糖尿病患者さんをはじめ、2型糖尿病患者さん、糖尿病医療に携わる方々は、ぜひご一読ください。
第14回 恋人ができるまで(本文より)
営業はまさに、「仕事を取ってくるのが仕事である」と朝礼で上司は言う。
もし仕事を取ってこなければ、つまり僕の場合は車が売れない、ということになるけれど、物理的にも、メンタル的にも、かなり追い込まれる。
車の営業も例外ではなく、1カ月ごとに評価され、とくに(日本で名の知れているベンツとかBMWとかの)輸入車の場合は、新人の営業マンでさえ月にだいたい2 ~3台の目標をもたされていたし、中堅とかベテランと呼ばれる営業マンになれば、月に5台くらいの目標を抱えていた。
ただ、新人でも中堅でもない僕は、2カ月ものあいだ、車がまったく売れずに困っていた。インスリンを打っても、あまり下がらない(朝食後の)血糖値のように、営業活動をしていても車はまったく売れなかった。いつもどおり、ちゃんと朝早くから出社して、手帳にぎっしり書いた営業活動を、欠かすことなくこなしていたと言うのに......。