求められる血糖コントロール値とは? HbA1c7.0%維持の重要性
糖尿病専門医による知見を集約した「糖尿病情報スクランブル」では、松葉育郎先生による「糖尿病診療の目」の第2回を公開しました。
新連載「糖尿病診療の目」へ ▶
「糖尿病診療の目」では、長年、糖尿病専門医として臨床に携わってきた松葉医院院長の松葉育郎先生に、その経験から得られた知識を披露していただきます。糖尿病医療に長年携わってきた専門医は、どのような視点を持って患者さんの情報を整理・把握し、診療に何を目指しているのでしょうか。糖尿病診療のヒントとして、今後に役立つ知識として、頭の中の引き出しにしまっておきたい情報を定期的にお届けします。
糖尿病診療の目「第2回 求められる血糖コントロール値とは?
― HbA1c 7.0%維持の重要性 ―」 (本文より)
2型糖尿病の治療において誰もがまず気になるのは、「自分の血糖値をいくつにすれば良いか?」という問いでしょう。ところが、血糖値は食事などで大きく変化しています。そこで、朝起きて食事をする前、いわゆる空腹時血糖値はいくつなのか? 食後の血糖値はどの位高くなるのか? といったところから見ていくことになりますが、食後の血糖値だけでなく空腹時血糖値も一様に高くなっているようなケースもあります。1日の中で変化し、日によっても変化が見られます。血糖値は、他人との比較もなかなか難しい検査値と言えます。患者さんからも、「食事をして、いちばん血糖が高くなるのはいつですか?」「どうして、自分の血糖は上がるのですか?」というような素朴な質問をよくいただきます。
一方、血糖値の大まかな変動を反映するのが、HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)です。HbA1cは、過去1~2カ月の血糖の平均値を反映する臨床検査値で、病状理解・管理に最も役に立つ「糖尿病コントロール指標」です。空腹時血糖値、食後血糖値とともに知っておかなければいけません。
2013年5月、日本糖尿病学会は、熊本で開催した学術集会において、新たな治療目標の評価基準を発表しました(参考:血糖コントロール目標を改訂 合併症予防のための基準はHbA1c7.0%未満 )。新しい目標値は、これまで5段階としていた血糖コントロール目標値をHbA1c値の「6.0%」「7.0%」「8.0%」の3段階に変更し、「6」「7」「8」とわかりやすく簡便化しています。なかでも最も重要な目標値を「糖尿病合併症予防のための目標値7%」としています。