日本人に合ったリスクスコアで冠動脈疾患を正確に予測
国立循環器病研究センターの予防医学・疫学情報部の西村邦宏室長らの研究チームが開発した「吹田スコア」は、心筋梗塞などの冠動脈疾患が10年以内に発症する危険度を、8項目のリスク要因で予測するというもの。
スコアによると、糖尿病のある人は、血糖コントロールの状態に関わらず、それだけで「6ポイント」が加算される。また、血圧の高い人は、血圧コントロールの状態によって「4~6ポイント」が加算されるが、管理状態が良ければ7ポイントが引かれる。
悪玉のLDLコレステロールの高値、善玉のHDLコレステロールの低値、CKD(慢性腎臓病)なども冠動脈疾患の危険因子だ。逆に言えば、治療を行いこれらの数値を良好に管理すれば、心筋梗塞などのリスクスコアの得点は低下する。
▽年齢、▽性別、▽喫煙、▽糖尿病、▽血圧、▽LDLコレステロール、▽HDLコレステロール、▽慢性腎臓病(CKD)という8つの危険因子を点数化し、その合計点で冠動脈疾患の発症危険度を予測できる。脂質異常のカテゴリーの基準値は、「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」(2012年版)に準じた。
日本でも心筋梗塞の発症は増えており、特に糖尿病を発症している人では発症リスクは高まるが、欧米人に比べ発症率は約2分の1にとどまる。欧米では「フラミンガムリスクスコア(FRS)」が広く用いられているが、日本人には不正確な指標だと指摘されていた。
また、慢性腎臓病(CKD)を発症すると、冠動脈疾患のリスクが高まることが知られるが、FRSでは検討されておらず、CKD患者にFRSを適用すると冠動脈疾患発症リスクが過少評価されるという問題があった。
そこで、研究チームは、大阪府吹田市で行われている大規模研究「吹田研究」をもとに、心筋梗塞など心臓病のリスクの高い都市部住民を対象として、CKDを含むさまざまな危険因子を組み合わせて、冠動脈疾患の10年間の発症危険度を予測する「吹田スコア」を開発した。
スコアの妥当性を検討するため、研究チームはFRSとの比較検証を実施した。心筋梗塞や脳卒中の既往がない5,866人の健常者(男性2,788人、女性3,078人、平均年齢54.5歳)を対象に、平均11.8年追跡調査し、213例の冠動脈疾患を観察した。
その結果、FRSは実際の発症率と比べリスクを過大評価する傾向があり、最大で約14%の開きがあった。一方、吹田スコアは実際の発症率とほぼ同様に予測でき、リスクスコアにCKDを含むことでより正確な予想が可能となることが明らかになった。
研究成果は、医学誌「Journal of Atherosclerosis and Thrombosis」オンライン版に3月25日付で発表された。
国立循環器病研究センター