多剤処方で複雑化、深刻な服薬指導の現状 アンケート調査より
半数の患者が
「薬の飲み方を間違えたことがある」
まず、薬の飲み方を間違えて(飲む時間や量)、副作用を経験したことがあるか、患者さんへ聞いてみました。すると、約半数の方が「間違えたことがある」と答え、副作用を感じたことがある方は全体の1割でした。しかし、食事を抜く時や薬を飲めなかった時など、状況に応じた薬の飲み方について「知っている方」は3~4割、「自己流で行っている」方が約3割、「全く知らない」方が2割と、飲み間違いを起こしやすい環境におられる方が多く見受けられました。一方、医療スタッフでは、「間違える人はいるが、副作用を起こした例はあまり聞かない」と「ときどきいる」が同程度の割合。副作用に至る人は少ないとはいえ、7割以上の医療スタッフが、患者さんが薬を飲み間違えることがあると実感していました。
副作用を起こしたことはありますか?
副作用を起こした方はおられますか?
東日本大震災直後の調査と変化なし
自分の薬を「覚えている」患者は6割
次に、現在飲んでいる薬について患者さんに聞いてみました。処方されている薬剤の種類は、3種類と4種類が最も多く、1種類、2種類、5種類と続きました。また、10種類以上の患者さんは8%おり、薬剤個々を把握、管理する難しさを感じるところです。このような中、自分が飲んでいる薬の種類や名前を覚えているか?の問いに、「覚えている」と回答した患者さんは6割で、残りは「覚えきれていない」「覚えていない」とのこと。実は、東日本大震災直後(2011年5月)に災害時の備えをテーマに行ったアンケートで同じ質問を行いましたが、驚いたことに今回とほぼ同じ数字で、周知啓発があまり進んでいない状況がうかがえました。
服薬指導をきちんと受けていない
と答える患者がほとんど・・はなぜ?
薬剤についての服薬指導の状況について聞いてみると、効能効果や用法用量については比較的ご存知の方が多かったものの、状況に応じた対応策については、ほとんど行われていないことが明らかになりました。例えば、「薬の副作用」について説明を受けた人は35%。また、経口薬治療を行う患者さんが知っておくべき情報の1つ、「食事を摂らなかった時の対処」や「薬を飲み忘れた時の対処」について指導を受けた人は13%、「お酒を飲むときの対処」は5%、「災害など緊急時の対処」は4%と非常に低いものでした。
医療スタッフ側に同じ内容で聞いたところ、「食事を摂らない時の対処」や「薬を飲み忘れた時の対処」については6割以上が指導を行っていると回答。「災害など緊急時の対処」を指導している医療スタッフは29%でした。生活の中での対処については、「経口薬治療の患者さん全員に指導している」と回答したのは4人に1人。半数は「必要と思われる人にだけ指導している」とのこと。
薬に対する説明は、医師が行うべきと考えている人も多いようですが、薬剤師に任せていると考える医師もいるとのこと。4割の医療スタッフが患者さんの投薬情報を関係者間で共有しておらず、処方内容による食事・運動療法の細やかな調整の難しさも浮き彫りに。災害時はもちろん、日常生活の些細なアクシデントに患者さん個々が上手く対応できるよう、服薬指導を改めて見直す必要があることと同時に、患者さん側も、ご自身の薬について詳しく知ることが大切であるとの意識改革も求められるところです。
実施している服薬指導の内容
自由記述では、'病状が悪化した時、きちんと対応できるか不安'、'血糖測定を行っていないので、低血糖になっているのか、薬に効果があるのか全くわからない'、'長年、量も種類も多くの薬を処方されており、なかなか減らない' といった患者さんの声が。また医療スタッフでは、'種類が増え、内服でも血糖コントロールがしやすくなった'という声が多い一方、'同じ種類の薬の使い分けや選択に困る時がある'、'自分の飲んでいる薬が分からなくなっている患者が増えた。飲み忘れた薬が何なのか、どの薬が余っているのか、話を聞いてもわからない' 等、現場の苦労が増えたという声も多くみられました。これら自由記述の詳細は、近日「患者さんのほんね・医療スタッフのホンネ」で紹介の予定です。
アンケートの詳細はこちら
アンケート調査結果(糖尿病情報Box&Net.No38.より)
関連情報
「災害時の備え」についてのアンケート調査結果(2011年5月実施)
患者さんのほんね・医療スタッフのホンネ
医療スタッフのための「糖尿病情報Box&Net.」No38(2013年10月1日発行号)