リナグリプチン試験結果 SU薬と同等の有効性で心血管イベントを減少
2011.07.20
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、選択的DPP-4阻害薬「リナグリプチン」の第3相臨床試験結果を発表した。リナグリプチン+メトホルミン併用投与と、SU薬+メトホルミン併用投与を比較した2年以上の長期試験の結果を、6月にサンディエゴにて開催された第71回米国糖尿病学会(ADA)で発表した。
試験結果では、リナグリプチンはSU薬とHbA1c(NGSP値)の降下作用が同等で、SU薬に比べ体重減少が認められ、低血糖発現率の減少、心血管イベントの減少も示された。リナグリプチンとSU薬の比較は、体重は-1.4kg vs. +1.3kg(調整平均差、-2.7kg、p<0.0001)、低血糖発現率は7.5% vs. 36.1%(p<0.0001)、心血管イベントは1.5% vs. 3.4%(相対リスク0.46 [0.23~0.91] p=0.02)。
リナグリプチンを24週間にわたって検討した別の試験では、血糖コントロール不十分な2型糖尿病患者にリナグリプチン2.5 mg 1日2回投与とメトホルミン1,000 mg 1日2回投与を併用投与したところ、平均HbA1cにベースラインから最大1.7%の減少が認められた。
リナグリプチン+メトホルミン併用投与は忍容性が良好であり、リナグリプチン、メトホルミンをそれぞれ単独投与したときよりも血糖コントロールの改善がみられた。
同試験では、リナグリプチン+メトホルミン併用投与で体重増加は認められず、低血糖リスクも低かった(5例、1.8%)。血糖コントロール不十分な患者(ベースラインHbA1c>11%)からなる非盲検群では、リナグリプチン2.5 mg 1日2回投与とメトホルミン1,000 mg 1日2回投与の併用によって、HbA1cが3.7%減少した。
また、腎機能障害の程度が正常・軽度・中等度・重度の2型糖尿病患者を対象にリナグリプチンの検討も行った。3件のランダム化プラセボ対照第3相臨床試験(n=2,141)の分析により、リナグリプチン投与患者では、腎機能の程度にかかわらず、プラセボ補正後平均HbA1cに一貫して減少が認められ、腎機能正常患者では-0.63%(p<0.0001)、軽度・中等度の腎機能障害患者では-0.69%(それぞれp<0.0001, p=0.0174)だった。
別の試験では、重症腎機能障害(RI)があり、血糖コントールも十分でない2型糖尿病患者を対象にリナグリプチンを投与したところ、投与から12週間後にプラセボ補正後平均HbA1cに-0.6%(p<0.0001)という有意な減少が認められた。いずれの群でも腎機能は安定し、高リスク集団にかかわらず心血管死は各群に1人ずつだった。
リナグリプチン(商品名:トラゼンタ)は、ベーリンガーインゲルハイムが創薬・開発した選択的経口DPP-4阻害薬。DPP-4を選択的に阻害することで、インクレチンホルモンであるGLP-1の血中濃度を高め、血糖低下作用を発揮する。GLP-1は血糖依存的に分泌されるので、DPP-4阻害剤は低血糖のリスクの発現が低い。また、本剤は主に糞中に未変化体のまま排泄される世界初の胆汁排泄型選択的DPP-4阻害剤であることが特徴となる。
トラゼンタは日本で日本ベーリンガーインゲルハイムが製造、販売を行い、日本イーライリリーと共同販促する。
日本ベーリンガーインゲルハイム
日本イーライリリー
日本イーライリリー
[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]