米国で開発中の糖尿病治療薬235剤リスト公開 米国研究製薬工業協会

2010.06.04
 米国の主要な研究開発型の製薬企業などが加盟している米国研究製薬工業協会(PhRMA:Pharmaceutical Research and Manufacturers of America)は5月25日、新規開発中の糖尿病治療薬に関するレポートを発表した。

 それによると、PhRMAに加盟する製薬企業では現在、合計235剤の新規の糖尿病治療薬の開発を行っている。その内訳は、1型糖尿病薬(24剤)、2型糖尿病薬(144剤)、糖尿病合併症など(59剤)、未記入・その他(23剤)となっている。いずれも現在、治験が進行中であるか、米国食品医薬品局(FDA)の承認を待っている。

 開発中の新薬には以下が含まれる――

  • 週1回の投与で血糖コントロールの改善効果のあるヒトホルモン製剤
  • 2型糖尿病の根本的原因に着目したインスリン感受性に影響する遺伝子を調整する薬剤
  • 週1回の投与で糖代謝に関連する蛋白質を選択的に抑制する薬剤

 米国では糖尿病が爆発的に増加しており、米国糖尿病学会(ADA)によると、米国の糖尿病有病数は2,000万人を超え、有病率は8%に達している。糖尿病と診断される患者は毎日4,110人に上るが、3分1は糖尿病であることに気が付いていない。米国疾病管理予防センター(CDC)の2008年調査によると、成人の糖尿病の新規診断例は10年で2倍になり、1987年以降は糖尿病に関連する死亡が45%増加した。

 PhRMAの副理事であるKen Johnson氏は「糖尿病治療と疾病管理をより改善し、患者がより長く健康的で生産的な生活をおくれるよう、最先端の研究を強力に推進する必要がある」と述べている。

米国研究製薬工業協会

ひとつの新薬を開発するのに10~15年 5,000の候補から1つだけ

 新しい薬の候補を作り、安全性や効果を確かめ、患者のもとに届けられるまでが創薬。PhRMAの加盟企業は2009年に、創薬に458億ドル(約4兆2,300億円)を費やし、業界全体の調査・投資額は653億ドル(約6兆300億円)に達した。

 PhRMAによると、創薬のハードルは高く、5,000の新薬候補のうちヒトを対象とした臨床試験にたどりつけるのは5つだけで、さらに、実際に米国食品医薬品局(FDA)により新薬として承認される比率は5つのうち1つだけだ。

 創薬に平均10~15年の時間が必要となり、タフツ薬剤開発研究センターの2007年の研究によると、ひとつの新薬を開発するのに平均13億ドル(約1,200億円)の費用がかかる。

 実験室で細胞や動物を使い新薬候補の安全性や効果を確かめるのに平均6.5年かかる。その後、ヒトを対象とした臨床試験を合計7年かけて行う。臨床試験は第1相から第3相に分かれる。

  • 第1相試験では、健康なボランティアに対して薬剤を投与し、その安全性や投与量を確認する。
  • 第2相試験では、第1相試験で安全性が確認された用量の範囲で薬剤を投与。その有効性や副作用を評価する。
  • 第3相試験では、より多数の患者に長期にわたり対し薬剤を投与、より詳細な情報を集め、実際の治療に近いかたちで効果と安全性を確認する。

 その後、試験データがまとめられ、FDAの承認を待つ。承認されれば、製薬会社は販売できるようになる。薬による健康被害を出さないように、世界的に承認審査がより慎重に行われるようになってきた。米国では販売後も薬の安全性を確かめるために、FDAは追加試験を請求できる。

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