GLP-1受容体作動薬が肥満関連のがんや全死亡のリスクを低下 米国臨床腫瘍学会

肥満はがんの主要なリスク因子のひとつであり、世界的な肥満人口の増加によるがん罹患率への影響が懸念されている。一方、近年、肥満に対する効果的な治療手段として、インクレチン関連薬であるGLP-1RAが多用されるようになってきた。しかし、GLP-1RAによる肥満治療が、がんリスク低下につながるのか否かは明らかでない。
この点についてMavromatis氏らは、リアルワールドデータを用いてランダム化比較試験を模倣する、ターゲット試験エミュレーション研究により検討した。対照薬は、GLP-1RAと同じくインクレチン関連薬ながらも明確な減量効果を有していないDPP-4iとした。
2013~2023年にGLP-1RAまたはDPP-4iが新規処方されていた、BMI 30以上の成人糖尿病患者のデータをもとに、背景因子を傾向スコアでマッチングさせて患者数1対1、各群8万5,015人(平均年齢56.8歳)のペアを抽出。平均3.9年間追跡し、14種類の肥満関連がんおよび全死亡のリスクを比較した。
その結果、いずれのリスクもGLP-1RA群の方が有意に低かった[肥満関連がんは調整ハザード比(aHR) 0.93、95%信頼区間 0.88~0.98、全死亡はaHR 0.92、同 0.87~0.97]。個々のがん種での検討でも、結腸がんと直腸がんについては有意差が認められ、GLP-1RA群が低リスクだった。
性別に検討した場合、男性では肥満関連がん、全死亡ともに、両群間のリスク差が非有意だった。それに対して女性ではいずれもGLP-1RA群が有意に低リスクであり[肥満関連がんはaHR 0.92、同 0.86~0.98、全死亡はaHR 0.80、同 0.74~0.86]、とくに全死亡に関しては性別による有意な交互作用(P<0.001)が認められた(肥満関連がんの交互作用は非有意)。
Mavromatis氏は、「われわれの研究結果は、GLP-1RAが肥満関連がん、とくに結腸がんや直腸がんの罹患リスクを低下させ、全死亡リスクを低下させる可能性を示唆している。この因果関係の証明のため、さらなる研究が必要とされる」と述べている。
なお、著者の1人がバイオ医薬品企業との利益相反(COI)に関する情報を開示している。また、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。
[HealthDay News 2025年5月28日]
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