CKMイベントの発症リスク、糖尿病の治療早期はHDL-C、進行期はeGFRが鍵に
第40回日本糖尿病合併症学会
ワークショップ 6 疫学・遺伝素因/心血管疾患
「糖尿病患者の心血管・腎・代謝(CKM)イベント発症率―治療期の比較」
発表日:2025年11月14日
演者:大星隆司(和歌山労災病院臨床検査科)
共同演者:味村彩美、丸山杏奈、中野雄斗、田村志宜、中尾隆太郎、若崎久生、中 啓吾、南條輝志男(和歌山労災病院内科)

和歌山労災病院臨床検査科/内科の大星隆司氏は、第40回日本糖尿病合併症学会(11月14~15日開催)のワークショップ6「疫学・遺伝素因/心血管疾患」において、「糖尿病患者の心血管・腎・代謝(CKM)イベント発症率―治療期の比較」と題する講演を行った。大星氏は、糖尿病の治療ステージを初期と進行期に分け、心血管・腎・代謝(CKM)イベントのリスク因子を検討。その結果、共通のリスク因子に加え、初期治療期ではHDL-C低値、進行治療期ではeGFR低下がそれぞれ独立したリスク因子であることを明らかにした。
CKMイベント発症率は進行治療期で高い傾向
大星氏は、近年注目されるCKM症候群の概念を踏まえ、糖尿病治療の進行度によってイベント発症リスクや関連因子が異なるかを検証した。対象は2016年に同科を受診した糖尿病患者1,855例で、「初期治療期(0~2期)」875例と、「進行治療期(3~6期)」980例に分類、2016~2021年までの6年間追跡した。CKMイベントの定義は、心血管治療介入、非致死性脳卒中・心筋梗塞、下肢動脈疾患、透析、心不全入院、および認知症・老衰による施設入所などとした。
解析の結果、6年間のCKMイベント累積発症率は全体で11.1%(207例)であった。治療期別では、初期治療期が10%(87例)、進行治療期が12%(120例)となり、進行期で発症率が高い傾向が見られた。イベントの内訳について大星氏は、「初期治療期では心血管イベント率と比較して、特徴的に透析への移行比率が少ない」と指摘。一方で進行治療期では、開始時点ですでに罹病期間が長く(10年以上)、eGFR低下や蛋白尿、進行網膜症、心血管疾患既往を有する割合が有意に高かったとした。
初期治療期は「HDL-C」、進行治療期は「eGFR」が特異的なリスク因子に
続いて大星氏は、各臨床因子がCKMイベント発症に与える影響を検討するため、Cox回帰モデルを用いた多変量解析の結果を報告した。その結果、治療期にかかわらず共通してイベント発症リスクを有意に上昇させる因子として、「65歳以上」(ハザード比:初期3.73/進行期2.04)、「蛋白尿あり」(同:3.25/1.95)、「心血管疾患の既往」(同:2.50/1.63)の3つが特定された。これら共通因子は保有数が増えるごとに、累積発症率が有意に上昇することも示された。
また、治療期ごとに特異的なリスク因子も明らかとなった。初期治療期においては「HDL-C 40 mg/dL未満」(ハザード比:2.2)が有意なリスク因子となったのに対し、進行治療期では「eGFR 60 mL/min/1.73m²未満」(ハザード比:1.9)がリスク因子として抽出された。この結果について大星氏は、「初期治療期では尿酸やHDL-C、LDL-Cといった代謝系の因子がCKMイベント発症に関係している」と考察。特にHDL-C低値の影響が初期で強く見られる点について、「初期治療期の方がHDL-Cが高く、進行期では低い傾向がある中で、初期における低値がイベントに関連した可能性がある」と解説した。
大星氏は、「65歳以上の高齢、蛋白尿、心血管疾患の既往は、治療期を問わず共通の強力なリスク因子である」と総括。その上で、「HDL-Cの低値は初期治療期の、eGFRの低下は進行治療期の、それぞれCKMイベント発症関連因子である」と述べ、糖尿病の病期進行度に合わせて、注視すべきリスク因子が異なる可能性を示唆した。






