アルツハイマー病の発症に関与するアミロイドβタンパク質の蓄積が糖尿病の発症と進行を促進
アルツハイマー病と2型糖尿病の相互作用と脳のエネルギー不足を解明
2型糖尿病の有無に関わらず、血中ケトン体の値が有意に低い
最近の研究から、アルツハイマー病(AD)の脳は、糖の利用率低下によるエネルギー不足にあることが報告されている。ケトン体は糖質が脳で不足した時に利用される代替のエネルギー源だが、血中レベルの低下は、認知機能障害の発症以前から、脳のエネルギー不足を進行させている可能性が考えられる。
しかし、これらのエネルギー代謝異常は、アミロイドβ(Aβ)の蓄積や認知機能に影響を与えなかった。
今回の研究成果から、ADの特徴であるAβの蓄積は、2型糖尿病への脆弱性を高め、疾患の発症と進行を促進することが示唆された。しかし、エネルギー代謝障害は、認知機能低下の誘導には不十分であり、加齢要因が必要である可能性も示された。
「今後、中年期以降の解析を進めることで、アルツハイマー病と2型糖尿病の相互作用と脳のエネルギー不足を端緒とした未知の認知症発症機序の解明につながることが期待されます」と、研究グループでは述べている。
研究は、国立長寿医療研究センター研究所統合神経科学研究部の王蔚研究員、田口明子部長らが、理化学研究所脳神経科学研究センター、名古屋市立大学と共同で行ったもの。研究成果は、「Neuropsychopharmacology Reports」に掲載された。
国立長寿医療研究センター
Effects of high-fat diet on nutrient metabolism and cognitive functions in young APPKINL-G-F/NL-G-F mice (Neuropsychopharmacology Reports 2022年5月18日)