日本人の身体活動量を実態把握 若年・中年・女性の目標達成率が低い 三大都市圏で活動量計を活用
日本人がどれだけ運動・身体活動をしているかを調査
厚生労働省は2024年に、「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」を策定し、健康づくりのために推奨する身体活動量を、[成人:1日 60分][高齢者:1日 40分]としている。
一方で、計測機器による高精度な身体活動量の測定が十分に行われておらず、代表性のある客観的データがないため、国民全体の達成率や実態が明らかになっていないことや、これまでの活動量計などを用いた調査研究は、地域や年齢層などに偏りがあるといった課題がある。
そこで明治安田厚生事業団と笹川スポーツ財団は、首都圏・中京圏・近畿圏の13都府県の、20歳以上80歳未満の男女を対象に、活動量計を用いで国民の身体活動量を実態把握する共同調査を実施した。
共同研究では、三軸加速度センサーが入った活動量計を使用し、身体活動を客観的に測定した。腰に装着するだけで身体活動データを1分ごとに記録し、個人の身体活動量や歩数が測定でき、日常生活で「どのくらい動いているのか」「どのくらい座っているのか」を本格的に測定・分析できる。対象者に、休日を含めた1週間、就寝時や入浴時などを除き装着してもらった。
650人の対象者のうち、196人から有効なデータを得ることができた(有効回収率30.2%)。
1日の推奨身体活動量の達成しているのは49.5%
その結果、厚労省の「身体活動・運動ガイド2023」が定める1日の推奨身体活動量の達成率は、全体で49.5%だった。
年齢別にみると、20~64歳の若年・中年者が45.6%だったのに対し、65~79歳の高齢者は61.7%と高かった。
性別でみると、男性では20~64歳 47.9%、65歳以上 66.7%、女性では20~64歳 43.6%、65歳以上 52.9%となり、若年・中年者・女性で達成率が低いことが分かった。
1日の3メッツ以上の身体活動の実施時間
また、1日あたりの歩数は全体で6925.6歩となり、世代と性別を問わず推奨歩数を下回っていた。1日あたりの座位時間は全体で8.9時間となり、高齢女性を除き、8時間を超えていた。
1日あたりの座位時間も全体で8.9時間と長い
活動量計を用い、WHO(世界保健機関)が定める、3メッツ以上=中高強度、1.6~3メッツ未満=低強度の身体活動量を計測
厚労省の「身体活動・運動ガイド2023」では、成人は、歩行または同等以上の身体活動を1日60分以上、高齢者は同様の活動を1日40分以上行うことが推奨されている。また、座っている時間が長くなりすぎないようするという、座位行動に関する指針も導入された。
「今回の調査は、三大都市圏を対象とした結果であり、解釈には注意が必要ですが、活動量を高める余地は十分にあると考えられます」と、研究者は述べている。
なお、「厚労省の"健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023"の推奨値は、あくまでも目安です。体を動かしていない人が、急に長時間の運動をするとケガをするおそれもあります。この目安より身体活動量が少ない人は、"今より少しでも多く体を動かす"ことが推奨されます」としている。
より全国規模の高精度な調査が必要
調査は2023年10月~11月に実施され、対象となったのは、満20歳以上80歳未満の男女650人(住民基本台帳から層化二段無作為抽出法により抽出)で、調査地点は、首都圏・中京圏・近畿圏の13都府県での計50地点。
研究グループは、訪問留置調査(調査員が回答者宅を訪問して活動量計と調査票を配布し、一定期間内での回答を依頼した後、調査員が再度訪問して活動量計等を回収する)を行い、活動量計による1週間の活動量測定および調査票を用いた生活習慣などを評価した。
なお、明治安田厚生事業団と笹川スポーツ財団は、将来的には調査エリアをさらに拡大して、より全国規模に近い高精度なデータで身体活動量を評価する予定としている。
厚労省「身体活動量の新基準」での達成率は49.5% (速報)
活動量計による身体活動・スポーツの実態把握調査-活動量計を用いた三大都市圏での成人調査は初- (笹川スポーツ財団)
公益財団法人 明治安田厚生事業団
公益財団法人 笹川スポーツ財団