メトホルミンが糖尿病患者の変形性関節症を抑制か インスリン抵抗性が関与

変形性関節症(OA)は肥満者に多い疾患であり、糖尿病も肥満者に多いことから、糖尿病患者にもOAがよく見られる。ただし、糖尿病はBMIとは独立したOAのリスク因子であるとするデータがあり、その病態にはインスリン抵抗性が関与しているとの研究報告がある。
一方、メトホルミンは2型糖尿病治療の第一選択薬として広く用いられており、インスリン抵抗性の改善を介した血糖降下作用に加え、抗炎症作用などさまざまな副次的作用を有することが知られている。よってメトホルミンが糖尿病患者のOAリスクを抑制する可能性が想定されるが、そのような視点での研究はこれまでのところ行われていない。これを背景としてZhu氏らは、糖尿病患者に対するメトホルミン使用とOAリスクとの関連を検討した。
この研究は、台湾の国民健康保険のデータベースを用い、2000~2012年に2型糖尿病と診断された患者での症例対照研究として実施された。OAリスクは、人工膝関節置換術(TKR)または人工股関節全置換術(THR)の施行で評価。解析は、年齢(±3歳以内)や性別のほかに、時間関係バイアスの調整のため2型糖尿病の診断の時期(±180日以内)をマッチさせた「処方時間分布マッチング(prescription time-distribution matching;PTDM)と、さらにメトホルミン以外の血糖降下薬や鎮痛薬の使用状況、血糖管理状態、併存疾患をマッチさせた「傾向スコアマッチング(propensity-score matching;PSM)」の計2通りで行われた。
PTDMコホートでは、メトホルミン群、対照群(メトホルミンが用いられていなかった群)、各群2万347人のデータセットが作成された。対照群はTKR463件、THR93件、計556件が施行されており、一方のメトホルミン群は同順に374件、55件、計429件だった。TKRまたはTHRが必要となるリスクは、対照群に比しメトホルミン群で30%有意に低かった〔調整ハザード比(aHR)0.70(0.60~0.81)〕。TKR〔aHR0.71(同0.61~0.84)〕とTHR〔aHR0.61(0.41~0.92)〕を個別に解析しても、いずれもメトホルミン群で有意なリスク低下が観察された。感度分析として行った、逆確率重み付け法による解析からも、同様の結果が得られた。
PSMコホートでは、各群1万163人のデータセットが作成された。対照群はTKR230件、THR41件、計271件が施行されており、一方のメトホルミン群は同順に188件、31件、計219件だった。TKRまたはTHRが必要となるリスクは、対照群に比しメトホルミン群で25%有意に低かった〔aHR0.75(0.62~0.89)〕。TKRとTHRを個別に解析すると、TKRはメトホルミン群で有意なリスク低下が観察され〔aHR0.76(0.62~0.92)〕、THRについては非有意だった〔aHR0.71(0.44~1.13)〕。
これらの結果を基に著者らは、「2型糖尿病患者へのメトホルミンの使用は、関節置換術が必要とされるリスクの有意な低下と関連しており、OAに対する同薬の潜在的な効果を示唆している」と結論付け、「メトホルミンがOAに有効か否かを明らかにするため、無作為化比較試験が望まれる」と述べている。
なお、一部の著者が製薬企業との金銭的関係の存在を明らかにしている。
[HealthDay News 2022年12月19日]
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