低炭水化物の食事パターンが日本人1型糖尿病の大血管イベント・全死亡リスク低下と関連

2026.11.05
日本人1型糖尿病患者を対象とした多施設共同前向き観察研究において、炭水化物の摂取が少なく、たんぱく質と脂質の摂取が多い食事パターンを示す「低炭水化物食スコア」が高いことが、大血管イベントまたは全死亡のリスク低下と関連していたとの結果が報告された。特に、植物性のたんぱく質・脂質に基づくスコアで強い関連がみられたという。本研究結果は、2026年10月16日付けで「Journal of Diabetes Investigation」オンライン版に掲載された。

 大血管疾患は1型糖尿病における主要な死因であり、その予防は依然として大きな課題である。CGMやインスリンポンプなどにより血糖管理は改善しているが、大血管リスクはそれだけでは十分に説明できず、食事を含む血糖管理以外の修正可能な因子への関心が高まっている。1型糖尿病ではカーボカウントによる血糖管理が行われるが、炭水化物・たんぱく質・脂質のバランスと長期予後との関連についてのエビデンスは限られている。そこで研究グループは、日本人の成人1型糖尿病患者を対象に、食事を中心とした生活習慣と大血管イベントまたは全死亡との関連を検討した。

 本研究は、順天堂大学とあそうクリニック(静岡)の外来患者を対象とした多施設共同前向き観察研究(Juntendo–Aso Type 1 Diabetes cohort)で、2019年12月~2021年9月に登録された20歳以上の1型糖尿病患者352人を約5年間追跡した。食事摂取は簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)で評価し、炭水化物摂取が少なく、たんぱく質と脂質の摂取が多いほど高得点となる低炭水化物食スコア(0~30点)を算出した。スコアは、総たんぱく質・脂質に基づく「総スコア」、植物性のたんぱく質・脂質に基づく「植物性スコア」、動物性のたんぱく質・脂質に基づく「動物性スコア」の3種類とした。主要複合アウトカムは、虚血性心疾患、脳血管疾患、末梢動脈疾患、全死亡のいずれかの初発とし、Cox比例ハザードモデルにより、年齢、性別、網膜症、腎症、大血管疾患の既往、収縮期血圧、総エネルギー摂取量を調整して解析した。

 対象者の平均年齢は51.4歳、平均HbA1cは7.9%で、エネルギー摂取に占める炭水化物の割合は49.3%であった。追跡期間(中央値1,799日)中に、35人(9.9%)が主要複合アウトカムを発症した。

 多変量解析の結果、3種類のスコアはいずれも主要複合アウトカムと逆相関しており、スコア1点上昇あたりのハザード比(HR)は、総スコアでHR 0.90(95%CI 0.82~0.98、P=0.012)、植物性スコアでHR 0.85(95%CI 0.76~0.94、P=0.003)、動物性スコアでHR 0.93(95%CI 0.87~0.996、P=0.037)であった。すなわち、炭水化物が少なく、たんぱく質と脂質が多い食事パターンほど、大血管イベントや死亡のリスク低下と関連しており、3種類のうち植物性スコアで最も強い関連がみられた。植物性スコアの1標準偏差(3.97点)上昇あたりでは、HR 0.52(95%CI 0.33~0.79)であった。この植物性スコアの関連は、大血管疾患の既往がある人を除いた解析や、追跡開始1年以内のイベントを除いた解析でも維持された。

 著者らは、日本人の成人1型糖尿病患者において、低炭水化物食スコア、特に植物性スコアが高いことが、大血管イベントまたは全死亡のリスク低下と関連していたと結論付けている。本研究の対象者のエネルギー摂取に占める炭水化物の割合は、一般の日本人(約55~60%)より低い49.3%であり、元々比較的炭水化物の少ない食事をしていた。今回のスコアの差は極端な炭水化物制限によるものではなく、炭水化物に代わるたんぱく質や脂質の質や供給源の違いを反映しており、それがリスクの差に関係している可能性があるとしている。また、いずれのスコアも、総エネルギー摂取量を調整に加えて初めて有意な関連を示したことから、栄養素の構成は総エネルギー摂取量とあわせて評価する必要があるとしている。

 一方、観察研究であるため因果関係は示せないこと、質問票による食事評価には測定誤差や想起バイアスがあること、イベント数が少ないことなどを限界として挙げ、より大規模な前向き研究や介入研究が必要であるとしている。

[ 糖尿病リソースガイド編集部 / 日本医療・健康情報研究所 ]

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