SGLT2阻害薬が1型糖尿病の心腎イベントリスクを抑制する可能性 5年間のCVD相対リスク減少率は6.1%
SGLT2iは、2型糖尿病患者の心血管疾患(CVD)や腎機能低下を抑制することが報告されているが、1型糖尿病患者にも同様の効果があるかは明らかになっていない。Stougaard氏らの研究は、その点を明らかにすることを目的として実施された。
研究の対象は、2001~2016年に同センターで治療を受けたeGFR45mL/分/1.73m²超の30~75歳の成人1型糖尿病患者3,660人。このうち、ベースライン時点でCVD既往のない3,284人(89.7%)のサブセットで、5年間および10年間でのCVDと末期腎疾患(ESKD)の推定リスクを、SGLT2iの処方の有無別に検討した。推定リスクの算出には、HbA1c、収縮期血圧、eGFRのデータを用い、1型糖尿病患者でのSGLT2iの有用性・安全性を検討した「DEPICT研究」などのトライアルの結果を援用した。
算出された推定リスクは、SGLT2i処方によりCVD、ESKD双方の相対リスクが有意に低下することを示していた。
具体的には、SGLT2i処方なしに対する5年間でのCVD相対リスク減少率(RRR)は6.1%(95%信頼区間5.9~6.3)と計算された。ベースライン時点でアルブミン尿が見られるサブグループではリスク差がより大きく、RRR11.1%(同10.0~12.2)と予測された。10年間でのCVDリスクについても、結果は同様だった。ESKDも同様に、5年間のRRRが5.3%(同5.1~5.4)であり、ベースライン時点でアルブミン尿が見られるサブグループではRRR7.6%(同6.9~8.4)だった。
この結果に基づきStougaard氏は、「われわれの研究によって、1型糖尿病患者に対するSGLT2iを用いた治療により、CVDとESKDのリスクが大幅に低下することが示された」とまとめている。また、1型糖尿病患者へのSGLT2iの使用には、糖尿病性ケトアシドーシスのリスクを上昇させる懸念などが指摘されるなか、同氏は「今回の研究の結果は、SGLT2iを使用する際のリスクとベネフィットのバランスを考慮する際に参考となる知見と言える」とも述べている。
なお、学会発表された研究結果は、一般に査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。
[HealthDay News 2021年11月15日]
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