SU薬の2型糖尿病患者に対する長期使用が低血糖リスクを増加 SU薬の5年以上の使用により低血糖リスクは3倍超に
SU薬の5年以上の使用により低血糖リスクは3倍超に上昇
SU(スルホニル尿素)薬の2型糖尿病患者に対する長期の使用は、自覚障害性低血糖(IAH)のリスク増加につながるという調査結果を、米国家庭医学会(AAFP)が発表した。
調査は、台湾の国立成功大学公衆衛生学部のChung-Yi Li氏らによるもの。研究成果は、「Annals of Family Medicine」に掲載された。
研究グループは、台湾台南市の薬局、診療所、保健所で登録された40~69歳の2型糖尿病患者898人の2022年8月~11月のデータを収集。参加者の約80%は2型糖尿病の罹患歴が5年以上で、罹患(SD)期間の平均は14.0年(9.8)だった。インスリンのみを使用していた患者は59.0%、SU薬のみを使用していた患者は34.9%、両方を使用していた患者は6.1%だった。
外来診察で使用できる低血糖に関する質問票であるGold質問票(Gold-TW)とClarke質問票(Clarke-TW)のそれぞれ中国語版を使用し、低血糖の状況について調査した。
その結果、薬剤の使用期間が1年未満の患者では、SU薬の使用者の低血糖の認知障害の発生率は47.8% (Gold)と30.4% (Clarke)だった。SU薬の使用期間が5年以上の患者では、発生率は70.7% (Gold)と56.9% (Clarke)に増加した。
SU薬の5年以上の使用により、低血糖の認知障害のリスクのオッズ比は3.50[Gold、95%CI 2.39~5.13]、および3.06[Clarke、95%CI 2.11~4.44]にそれぞれ上昇した。
一方でインスリン使用者では、使用期間が1年未満の患者では、低血糖の認知障害の発生率は57.3% (Gold)と30.1% (Clarke)だった。インスリンの使用期間が5年以上の患者では、発生率は41% (Gold)と28.2% (Clarke)に減少した。
また、血糖値や網膜検査などの検査をともなう定期的な外来診療を受けている患者では、SU薬とインスリン使用者の両方で、低血糖の認知障害の発生率が低下する傾向が示された。
インスリンを使用している患者では低血糖リスクは減少
なお、対象となった患者の94.3%が2~3ヵ月月ごとに糖尿病治療のために外来診察を受けており、これは中国の糖尿病診療ガイドラインと一致しているとしている。
過去3ヵ月以内に血糖値検査を受けた患者は56.3%で、過去1年間に尿中微量アルブミン検査を受けた患者は80.1%、網膜症の検査を受けた患者は70%、足の検査を受けた患者は79.3%だった。
定期的な外来診療を受けている患者は低血糖リスクが低下
「SU薬は、2型糖尿病の血糖管理のために使用されている経口薬だが、血糖値に関係なくインスリン分泌を増加させ、低血糖を引き起こすリスクがある」と、Li氏は述べている。
「SU薬の長期使用は、2型糖尿病患者の低血糖の認知障害のリスクを上昇させることが示された。この薬を長期間使用するほど、低血糖のリスクが高まる可能性がある。一方で、定期的な外来診療を受けている患者では、低血糖のリスクは低下する傾向も示された」。
「SU薬は安価であり、台湾では一般的に使用されているが、現行の2型糖尿病の診療ガイドラインでは、低血糖リスクがより少ない新しいクラスの薬剤を治療に使用することが推奨されている」としている。
Long-term sulfonylurea use linked to higher risk of low blood sugar unawareness in type 2 diabetes patients (米国家庭医学会 2024年7月22日)
Long-Term Sulfonylurea Use and Impaired Awareness of Hypoglycemia Among Patients With Type 2 Diabetes in Taiwan (Annals of Family Medicine 2024年7月)