持続血糖モニター(CGM)の活用が拡大 糖尿病予備群に使用するときの問題点は? 「ガイドラインが必要」と専門家は指摘
糖尿病と診断されていない人が持続血糖モニター(CGM)を使用し取得したデータを、臨床専門家がどのように評価するかについて、ガイドラインが必要だとする研究が発表された。
CGMによる食後血糖値の評価は、非糖尿病者に対しては正確ではない可能性があるという報告も発表された。
「CGMを使う動機は多岐にわたり、健康的な行動を促進し、糖尿病を予防したいという願望もそのひとつだ。CGMは米国で現在のところ、糖尿病前症や糖尿病の診断や予測のための使用は承認されていないが、その用途の可能性は将来有望と言える」と、研究者は指摘している。

CGMの境界型糖尿病や非糖尿病への使用ではガイドラインが必要
血糖値をリアルタイムに測定できる持続血糖モニター(CGM)は、米国ではFDA(食品医薬品局)が店頭販売を許可したことにより、糖尿病ではない人も健康管理に役立てられると、消費者の関心が高まっている。
一方で、糖尿病と診断されていない人がCGMを使用し取得したデータを、臨床専門家がどのように評価するかについて、ガイドラインが必要だとする研究を、ボストン大学が発表した。
研究は、同大学医学部内分泌学部の糖尿病・栄養・体重学科のNicole Spartano氏らによるもの。研究成果は、「Journal of Diabetes Science and Technology」に掲載された。
研究グループは、糖尿病・内分泌領域の専門医18人を対象に調査を行い、糖尿病のない人に「Dexcom G6 Pro」を使用し取得したCGMデータのレポート20件(HbA1cと空腹時静脈血糖値)を評価するよう依頼した。糖尿病専門医は、糖尿病患者の複雑な病態に対応しているが、糖尿病ではない人を治療することはまれだ。その後、臨床医によるフォローアップを推奨するかや、その判断の理由を報告してもらった。
その結果、CGMに関する豊富な経験をもつ専門の臨床医のあいだでも、評価や見解の不一致がみられた。
臨床医の半数以上は、HbA1cが5.7%未満、空腹時血糖値が100mg/dL未満であっても、高血糖(>180mg/dL)の時間が2%を超えた個人に対しては、フォローアップを推奨した。一方で、平均血糖値あるいは血糖管理指標にもとづいてフォローアップを推奨する傾向は示されなかった。全体として、CGMレポートにもとづいてフォローアップを受けるべき個人に関する推奨事項の一致率は低いことが示された(Fleiss Kappa=0.36)。
「まだ糖尿病と診断されていないが、親族が2型糖尿病であり遺伝的因子がある、あるいは健診で高血糖を指摘された人など、CGMを使い血糖値を追跡することに興味をもっている人は増えている。糖尿病前症(prediabetes)であり、糖尿病を予防したいという人もいる」と、Spartano氏は指摘している。
「CGMの専門知識や技術をもつ医師が、こうした新しい集団を対象に、CGMで取得したデータの解釈についてアドバイスすることは有益だ。CGMを使う動機は多岐にわたり、健康的な行動を促進し、糖尿病を予防したいという願望もそのひとつだ。CGMは米国で現在のところ、糖尿病前症や糖尿病の診断や予測のための使用は承認されていないが、その用途の可能性は将来有望と言える」としている。
非糖尿病者では正確でない可能性が
持続血糖モニター(CGM)による食後血糖値の評価は、非糖尿病者に対しては正確ではない可能性があると、英国のバース大学が発表した。
研究は、同大学栄養・運動・代謝センターのJavier Gonzalez教授らによるもの。研究成果は、米国栄養学会(ASN)が刊行している「American Journal of Clinical Nutrition」に掲載された。
CGMは、糖尿病患者の血糖値管理を支援するために設計されたデバイスだが、血糖変動が健康に与えるさまざまな影響が知られるようになり、現在では健康志向の高い人々がさまざまな食品が血糖値に及ぼす影響を評価するためにも使用されている。
研究グループは、果物ベースのさまざまな食品に対する反応を測定したときの、CGMの精度を評価することを目的に、糖尿病と診断されたことがなく、体格指数(BMI)が普通体重の範囲におさまっている健康なボランティア15人を対象に、ランダム化クロスオーバー設計による試験を実施した。
対象者に、50gGCT(経口ブドウ糖負荷試験)を実施し、それに相当するブドウ糖50gを含む果物加工食品を摂取してもらい、120分間に15分ごとにCGMにより血糖値を評価し、同時に毛細血管から血液サンプルも採取した。
その結果、CGMと従来の血糖測定法を比較したところ、CGMでは一貫してより高い血糖値が示された。
果物スムージーなどを摂取した場合の、CGMにより推定された血糖値を血液サンプルの血糖値に比べたときの、それぞれの平均差および標準偏差は、空腹時血糖値が16.2±10.8mg/dL、食後血糖値が16.1±9.0mg/dLになった[ともにP<0.001]。
CGMによるバイアスは食後検査によって異なり、市販の果物スムージー(ブドウ糖50gを含む)のglycemic index(GI)値は、CGMでは69[95%CI 48~99]となり、血液サンプルの53[95%CI 40~69]よりも高かった[P=0.05]。CGMはGI値を30%程度、過大評価したことが示された。
「CGMは、糖尿病患者の血糖管理に役立てられる素晴らしいツールであることに違いはないが、非糖尿病者にとっては、現在のパフォーマンスにもとづくと誤解を与える可能性がある。少なくとも、食品のGI値が高いか低いかを判断するためには、CGMは優先するべき方法ではない可能性がある」と、Gonzalez教授は指摘している。
「たとえば、果物をホールフーズとして食べた場合、血液サンプルでは低GIであることが示されたが、CGMによる測定では中・高程度と誤分類された。このことは、果物が血糖値の有害な上昇を引き起こす可能性があるという誤解を与える原因になる可能性がある」。
「CGMは皮下の間質液のグルコース濃度を連続して測定しているため、血糖変動の時間の遅れなどの不一致を生じる可能性がある。血糖値を正確に評価したいのであれば、従来の血糖値の測定法と並行して行った方が、より安全だと言えるだろう。将来的にはCGMのパフォーマンスのさらなる向上が期待される」としている。
Guidelines needed for interpreting continuous glucose monitoring reports in those without diabetes (ボストン大学医学部 2025年2月18日)
Expert Clinical Interpretation of Continuous Glucose Monitor Reports From Individuals Without Diabetes (Journal of Diabetes Science and Technology 2025年2月12日)
Researchers warn continuous glucose monitors can overestimate blood sugar levels (バース大学 2025年2月26日)
Continuous glucose monitor overestimates glycemia, with the magnitude of bias varying by postprandial test and individual – a randomized crossover trial (American Journal of Clinical Nutrition 2025年2月26日)