スタチン療法は糖尿病リスクをわずかに上昇させる 用量依存的に血糖値が上昇 血糖管理の悪化のおそれが

2024.05.22
 スタチン療法は、血糖値のわずかな上昇を引き起こす可能性があり、すでにスタチンを服用していて糖尿病リスクの高い患者は、糖尿病をより早く発症する可能性があることが、オックスフォード大学による、追跡期間が2年以上で1,000例以上を対象とした、計23件(15万4,664例)のスタチン療法に関する二重盲検ランダム化比較試験(RCT)のメタ解析により示された。

スタチン療法は用量依存的に血糖値を上昇させる
ただしスタチンのベネフィットはリスクを大幅に上回る

 スタチン療法は、血糖値のわずかな上昇を引き起こす可能性があり、すでにスタチンを服用していて糖尿病リスクの高い患者は、糖尿病をより早く発症する可能性があることが、追跡期間が2年以上で1,000例以上を対象とした、計23件(15万4,664例)のスタチン療法に関する二重盲検ランダム化比較試験(RCT)のメタ解析により示された。

 臨床試験では、スタチンの服用が糖尿病の発症リスクを高める可能性があり、とくにLDLコレステロール値を管理するために高用量スタチンを服用している患者でこのリスクは高いことが示された。

 研究は、英オックスフォード大学ナフィールド人口健康学部が発表したもので、スタチン療法の評価に焦点をあてたRCTで構成される共同研究である「Cholesterol Treatment Trialists’ (CTT) Collaboration」の一環として実施されたもの。研究成果は、「Lancet Diabetes & Endocrinology」に掲載された。

 CTTコラボレーションに参加した試験のうち、19件の試験ではスタチンとプラセボを比較し(参加者 12万3,940例、糖尿病患者 2万5,701例[21%]、追跡期間中央値 4~3年)、4件の試験ではより高用量のスタチン療法とより低用量のスタチン療法を比較した(参加者 3万724例、糖尿病患者 5,340例[17%]、追跡期間中央値 4.9年)。

 その結果、主に次のことが示された――

    •  スタチン療法は血糖値のわずかな上昇を引き起こし、これは患者が新規に糖尿病と診断される比率の中程度の上昇につながる。

    •  低~中用量スタチンを投与された患者は、プラセボを投与された患者と比較して、新規に糖尿病と診断されるリスクは10%高かった。
      [3万9,179例中2,420例[1.3%/年] 対 3万9,266例中2,214例[1.2%/年]、発生率比[RR] 1.10、95%CI 1.04~1.16]

    •  高用量スタチンを投与された患者は、プラセボを投与された患者と比較して、新規に糖尿病と診断されるリスクは36%高かった。
      [9,935例中1,221例[4.8%/年] 対 9,859例中905例[3.5%/年]、RR 1.36、95%CI 1.25~1.48]

    •  糖尿病の新規発症リスクの増加は、年齢、性別、BMI、血糖値に関係なく、すべてのスタチン用量で同様にみられた。

    •  ベースラインで糖尿病のなかった患者で、平均血糖値は低~中用量スタチン群で1mg/dL程度[95%CI 0.03~0.05mmol/L]、高用量スタチン群でも1mg/dL程度[同 0.02~0.06mmol/L]上昇し、HbA1cの平均値は低~中用量スタチン群で0.06%[95%CI 0.00~0.12]、高用量スタチン群では0.08%[同 0.07~0.09]上昇した。

    •  同じメカニズムにより、糖尿病患者の血糖管理の悪化が引き起こされる可能性がある。プラセボ群と比較して、試験開始時にすでに糖尿病を発症しており、低~中用量のスタチンを投与された患者は、血糖値が上昇するリスクが10%高く[RR 1.10、95%CI 1.06~1.14]、より高用量のスタチンを投与された患者は、リスクは24%高かった[RR 1.24、95%CI 1.06~1.44]。

 「これまでの臨床試験で、スタチンはLDL-C値を下げ、糖尿病の有無に関わらずLDL-Cが18mg/dL低下するごとに心臓発作や脳卒中のリスクは約25%減少することが示されているが、今回の調査結果は、日常臨床の診療下のスタチン療法が用量依存的に、糖尿病有病数のわずかな増加につながる可能性があることを示している」と、同学部代謝内科の名誉コンサルタントであるDavid Preiss氏は述べている。

 「ただし、臨床での直接的な影響を考慮すると、主要な血管イベントに対するスタチンの既知のベネフィットは、血糖値のわずかな上昇により生じる糖尿病に関連するリスクを大幅に上回っている」と結論している。

Statins can cause a small increase in blood sugar levels, so people at high risk may develop diabetes sooner (オックスフォード大学ナフィールド人口健康学部 2024年3月27日)
Effects of statin therapy on diagnoses of new-onset diabetes and worsening glycaemia in large-scale randomised blinded statin trials: an individual participant data meta-analysis (Lancet Diabetes and Endocrinology 2024年3月27日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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