血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤「ベオビュ」 糖尿病黄斑浮腫(DME)の治療薬としてFDAより承認
日本でも滲出型AMD、DME、増殖糖尿病網膜症(PDR)を対象とした臨床試験が進行
糖尿病黄斑浮腫(DME)は、糖尿病患者によくみられる微小血管合併症で、視力を低下させ、最終的に失明にいたる可能性がある。DMEは先進国で成人の失明の主な原因であり、1型糖尿病患者の12%、2型糖尿病患者の28%が罹患しているとしている。
糖尿病にともなう高血糖は、眼の中の細かい血管を傷つけることで、滲出液の原因になる。この損傷によって、血管の成長を促すタンパク質であるVEGF(血管内皮増殖因子)が過剰に産生される。VEGF濃度が上昇すると、異常で漏出性の血管の増殖が刺激され、黄斑部に滲出液(浮腫)がたまる。DMEの初期症状には中心視力のかすみ、視覚の歪み、色覚異常などがあるが、早期段階では症状をともなわずに進行することもある。
VEGF阻害薬「ベオビュ」(一般名:ブロルシズマブ)は、滲出型の加齢黄斑変性(AMD)の治療薬として米国・EU・英国・日本・カナダ・オーストラリアを含む70ヵ国以上で承認されており、DME治療薬としては欧州委員会(EC)からも承認を受け、27ヵ国などで適用されている。日本では、2022年6月にDMEの効能又は効果の追加承認を取得した。現在、滲出型AMD、DME、および増殖糖尿病網膜症(PDR)の患者を対象とした、ベオビュの有効性を検討する臨床試験が進行している。
今回のFDA承認は、DME患者を対象にベオビュ(ブロルシズマブ6mg)をアフリベルセプト2mgと比較した第3相臨床試験であるKESTREL試験およびKITE試験の1年目のデータにもとづいている。
両試験は、DMEによる視覚障害を有する患者を対象とした、「ベオビュ」とアフリベルセプトの安全性および有効性を比較する2年間の国際共同無作為化二重盲検第3相試験。両試験に、36ヵ国から合計926人の患者が参加した。
両試験で、ベオビュは最高矯正視力(BCVA)のベースラインからの変化量について、アフリベルセプトに対して非劣性を示した。52週目にIRF(網膜内の滲出液)および/またはSRF(網膜下液)が認められた患者の割合は、KESTREL試験では、ベオビュ群60.3%対アフリベルセプト群73.3%、KITE試験では、ベオビュ群54.2%対アフリベルセプト群72.9%だった(優越性検定は実施されていない)。
両試験で同剤の投与を受けた患者では、中心サブフィールド厚(CST)がベースラインから有意に低下し、この低下は4週目から始まり52週目まで持続した。
今回承認された「ベオビュ」の処方では、導入期で6週間間隔で5回投与を受けた後、8週間から12週間ごとに1回の投与が必要とされている。両試験のアフリベルセプト群の投与については、FDA承認によって推奨されている8週間隔の投与が行われた。
両試験は、導入期での6週間間隔での血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤の投与を評価したはじめてのピボタル試験であり、同剤は、治療開始から1年目までの注射回数が少なくなる可能性を示唆している。網膜滲出液の減少および頻回な投与スケジュールの負担軽減などは、DMEでのアンメットニーズとなっている。
DME臨床試験で、ベオビュ投与群でもっとも多く報告された有害事象は結膜出血だった(5%以上)。KESTREL試験での眼内炎症(IOI)の発現率は、ブロルシズマブ3mg群で4.7%(網膜血管炎1.6%を含む)、ブロルシズマブ6mg群で3.7%(網膜血管炎0.5%を含む)、アフリベルセプト2mg群で0.5%だった。
KITE試験でのIOIの発現率は、ブロルシズマブ6mg群およびアフリベルセプト2mgで同等であり(1.7%)、網膜血管炎は報告されなかった。網膜血管閉塞は、KESTREL試験のブロルシズマブ3mg群で1.1%、ブロルシズマブ6mg群で0.5%が報告され、KITE試験でのブロルシズマブ6mg群およびアフリベルセプト群はともに0.6%だった。
KESTREL試験で1年目にベースラインから15文字以上低下した患者の割合は、ブロルシズマブ3mg群で1.6%、ブロルシズマブ6mg群で0%、アフリベルセプト群で0.5%だった。KITE試験で1年目にベースラインから15文字以上低下した患者の割合は、ブロルシズマブ6mg群で1.1%、アフリベルセプト群で1.7%だった。ブロルシズマブ6mg群は、「ベオビュ」の承認用量だ。
ベオビュ硝子体内注射用キット120mg/mL 添付文書 医療従事者向けRMP資材 (医薬品医療機器総合機構)
KESTREL and KITE: 52-Week Results From Two Phase III Pivotal Trials of Brolucizumab for Diabetic Macular Edema (American Journal of Ophthalmology 2022年6月)