糖尿病のGLP-1受容体作動薬にはベネフィットとリスクの両方がある 筋肉よりも体脂肪を減らす効果が高いことも確認 最新情報

2025.03.05

 GLP-1受容体作動薬の使用が、物質使用障害、アルツハイマー病を含む認知症、凝固異常症、心血管代謝疾患、感染症、呼吸器疾患などのそれぞれのリスク低下と関連していることが、約195.5万人の糖尿病患者のデータを解析した新たな研究で示された。

 その一方、GLP-1受容体作動薬は、単独での使用では低血糖を起こすリスクは低いものの、吐き気、嘔吐、下痢、稀に胃の麻痺といった胃腸障害や、稀ではあるが膵炎や腎炎などのリスクを増やすことなども指摘されている。

 GLP-1受容体作動薬による体重減少の促進は、筋肉量よりも脂肪量を減らすことでもたらされることも、遺伝子研究で取得したデータの解析により示された。

GLP-1受容体作動薬の使用にはベネフィットもリスクもある 糖尿病患者200万人を調査

 2型糖尿病の治療に広く使用されているGLP-1受容体作動薬は、そのユニークな薬理学的メカニズムにより、血糖降下作用と減量の促進の両方で顕著な有効性が示されている。

 GLP-1受容体作動薬の使用が、物質使用障害、アルツハイマー病を含む認知症、凝固異常症、心血管代謝疾患、感染症、呼吸器疾患などのそれぞれのリスク低下と関連していることが、約195.5万人の糖尿病患者のデータを解析した新たな研究で示された。

 その一方、GLP-1受容体作動薬は、単独での使用では低血糖を起こすリスクは低いものの、吐き気、嘔吐、下痢、稀に胃の麻痺といった胃腸障害や、稀ではあるが膵炎や腎炎などのリスクを増やすことなども指摘している。

 研究は、ワシントン大学医学部およびVAセントルイスヘルスケアシステム臨床疫学センターのZiyad Al-Aly氏らによるもの。研究成果は、「Nature Medicine」に掲載された。

 研究グループは今回、米国退役軍人省の約200万人の糖尿病患者のデータベースを使用し、GLP-1受容体作動薬、SU薬、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬のそれぞれの投与と175の健康アウトカムとの関連を、体系的にマッピングした。

 その結果、GLP-1受容体作動薬の使用は、通常のケアと比較して、物質使用障害、発作、神経認知障害(アルツハイマー病や認知症を含む)、凝固異常症、心血管代謝疾患、感染症、いくつかの呼吸器疾患のそれぞれのリスク低下と関連していることが示された。

 その一方で、GLP-1受容体作動薬の使用は、胃腸障害、低血圧、失神、関節炎、腎結石、間質性腎炎、薬剤誘発性膵炎のそれぞれのリスク増加と関連することも示された。

 研究グループは今回、米国退役軍人省の糖尿病患者のデータベースを使用し、GLP-1受容体作動薬群 21万5,970人、SU薬群 15万9,465人、DPP-4阻害薬群 11万7,989人、SGLT2阻害薬群 25万8,614人、SU薬・DPP-4阻害薬・SGLT2阻害薬を開始した同数の患者からなる対照群 53万6,068人、GLP-1受容体作動薬群以外の糖尿病薬を使用した対照群 120万3,097人をそれぞれ比較した。

 「GLP-1受容体作動薬の投与を開始する際には、医師はそのベネフィットとリスクについて十分に考慮する必要がある。研究成果は、GLP-1受容体作動薬の使用に関する洞察を提供するもので、臨床ケアのための情報提供や、医療計画の指針として役立つ可能性がある」と、研究者は指摘している。

GLP-1受容体作動薬による体重減少は
筋肉よりも体脂肪を減らすことでもたらされる

 GLP-1受容体作動薬の使用による体重減少の促進は、筋肉量よりも脂肪量を減らすことでもたらされることが、遺伝子研究で取得したデータの解析により示された。

 研究は、中国の香港大学医学部公衆衛生学院のShiu Lun Au Yeung氏らによるもの。研究成果は、「Diabetes, Obesity and Metabolism」に掲載された。

 GLP-1受容体作動薬は、主に2型糖尿病、最近では肥満症の治療薬として使用されており、血糖降下作用に加えて、減量のための薬理学的介入としての使用が増えている。一方で、GLP-1受容体作動薬による体重減少は、筋肉量の減少をともない、身体的フレイルやサルコペニアのリスクを高めるのではないかという懸念があった。

 そこで研究グループは、欧州の80万人超が参加した複数のゲノムワイド関連研究(GWAS)から得られた遺伝子データを解析し、GLP-1受容体作動薬の効果を模倣する、BMIの低下に関連する特定の遺伝子変異(rs877446)を特定した。

 その結果、GLP-1受容体作動薬の効果を模倣する遺伝子構成をもつ参加者は、除脂肪量(全身の除脂肪量と体幹部の除脂肪量)と体脂肪(全身脂肪量、体幹部脂肪率、体脂肪率)の両方が減少したことが示された。

 具体的には、BMIが1減少するごとに、全身脂肪量は約7.9kg減少し、筋肉量は約6.4kg減少し、これはGLP-1受容体作動薬が筋肉よりも体脂肪の減少を大きく引き起こし、体脂肪率が約4.5%減少することを示唆しているとしている。

 「GLP-1受容体作動薬は、筋肉よりも体脂肪を減らす効果が高いことが裏付けられた。臨床試験で得られるエビデンスが限られている場合、遺伝学の利用により薬の効果を解明するのは、タイムリーかつコスト効率の良い方法になりえる」と、研究者は述べている。

Mapping the effectiveness and risks of GLP-1 receptor agonists (Nature Medicine 2025年1月20日)
HKUMed reveals genetic evidence that diabetes drug GLP-1 receptor agonists achieve weight loss primarily by reducing fat mass more than muscle (香港大学 2025年2月23日)
Relative effects of genetically proxied glucagon-like peptide-1 receptor agonism on muscle and fat mass: A Mendelian randomization study (Diabetes, Obesity and Metabolism 2025年1月6日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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