メトホルミンの使用が過体重・肥満成人の認知症・死亡リスク低下と関連

2025.09.04
メトホルミンが処方されているBMI25以上の過体重または肥満の成人では、BMIカテゴリーにかかわらず、認知症および全死亡のリスクが低いことを示すデータが報告された。台北医学大学(台湾)のYu-Liang Lin氏らの研究によるもので、詳細は「Diabetes, Obesity and Metabolism」に8月6日掲載された。

 メトホルミンは多くの国で2型糖尿病の第一選択薬として古くから使用されており、血糖降下以外の副次的作用に関するエビデンスも豊富。同薬の副次的作用の一つとして、認知症のリスクを抑制する可能性が示唆されている。Lin氏らは、メトホルミンが処方されることの多い過体重または肥満を有する患者における、認知症罹患率および全死亡率に関する長期的なデータを解析し、同薬の使用がそれらのリスク低下と関連しているか否かを検討した。

 この研究には、世界各地の医療機関の電子医療記録を統合したリアルワールドのデータベース(TriNetX global federated health research network)が用いられた。過体重・肥満に該当する患者をBMIに基づき後述の4群に分類。BMIカテゴリーごとに、傾向スコアマッチングにより患者特性の一致するメトホルミン使用群とメトホルミン非使用群を設定し、カプランマイヤー法を用いて10年間の追跡期間中の認知症罹患率と全死亡率を比較した。

 解析対象者数は、BMI25~29.9のカテゴリーが13万2,920人、同30~34.9が14万2,723人、35~39.9が9万4,402人、40以上が8万2,732人だった。解析の結果、追跡期間中の認知症罹患率と全死亡率は、全てのBMIカテゴリーでメトホルミン使用群の方が有意に低いことが示された。具体的には、認知症罹患のハザード比(95%信頼区間)は前記のBMIカテゴリーの順に、0.875(0.848~0.904)、0.917(0.885~0.951)、0.878(0.834~0.924)、0.891(0.834~0.953)であり、全死亡については0.719(0.701〜0.737)、0.727(0.708〜0.746)、0.717(0.694〜0.741)、0.743(0.717〜0.771)であった。

 著者らは、「多施設の大規模なデータを統合したコホート研究において、メトホルミンの使用は過体重・肥満者における認知症および全死亡リスクの低下と関連していた。この保護効果は全てのBMIカテゴリーで有意だったが、カテゴリー間に差が認められた」と結論付けている。また、「これらの結果は、メトホルミンが過体重・肥満者の認知症リスクを抑制する可能性を示唆している。その根底にあるメカニズムを探るために、さらなる研究が必要とされる」と付け加えている。

(HealthDay News 2025年8月12日)

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