GLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬の併用 糖尿病患者の心臓病と腎臓病に対する高い予防効果を確認 GLP-1RAは肥満関連がんのリスクも低下

2024.07.10
 GLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬の併用は、2型糖尿病患者の心臓病と腎臓病に対する予防効果が高いことが、12件の大規模プラセボ対照試験のデータをメタ解析した研究で明らかになった。

 GLP-1受容体作動薬にSGLT2阻害薬を追加した場合、主要な心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、心血管死)のリスクは11%減少し、心不全あるいは心血管死による入院は23%減少した。さらに、慢性腎臓病(CKD)の進行リスクは33%減少し、年間の腎機能の低下は60%遅くなった。

 また、2型糖尿病患者にGLP-1受容体作動薬を使用すると、インスリンやメトホルミンと比較して、13種類の肥満関連がん(OAC)のリスクが低下することも示された。

GLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬の併用は効果が高い

 GLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬の併用は、2型糖尿病患者の心臓病と腎臓病に対する予防効果が高いことが、オーストラリアのジョージ国際健康研究所が、12件の大規模プラセボ対照試験のデータをメタ解析した研究で明らかになった。

 研究成果は、5月にストックホルムで開催された第61回欧州腎臓学会で発表されるとともに、「Lancet Diabetes & Endocrinology」に掲載された。

 研究グループは、SMART-C(SGLT2阻害薬メタ解析心腎試験コンソーシアム)に登録された7万3,238人の2型糖尿病患者(うち3,065人はGLP-1受容体作動薬が処方されていた)を対象に、SGLT2阻害薬を用いた12件の大規模プラセボ対照試験のデータをメタ統合した。

 その結果、GLP-1受容体作動薬にSGLT2阻害薬を追加した場合、プラセボと比較し、主要な心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、心血管死)のリスクは11%減少し、心不全あるいは心血管死による入院は23%減少した。さらに、慢性腎臓病(CKD)の進行リスクは33%減少し、年間の腎機能の低下は60%遅くなった。

 両剤を併用したときの新たな安全性の懸念は確認されなかった。なお、SGLT2阻害薬のもたらすメリットはGLP-1受容体作動薬の使用とは関係なくみられた。

 「GLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬の使用適応が拡大しており、両剤を併用した場合の効果を調べることは重要だ。今回の研究は、両剤の併用の臨床結果に関する最大かつもっとも包括的な評価となる」と、同研究所の上級研究員であり、シドニーのロイヤル ノースショア病院の腎試験ディレクターであるBrendon Neuen氏は述べている。

 「両クラスの薬剤は互いに独立して作用すると考えられる。SGLT2阻害薬は、心不全と慢性腎臓病に対する明らかな効果があり、一方、GLP-1受容体作動薬は心臓発作、脳卒中、腎臓病のリスクを軽減する。このことはFLOW試験で実証されており、今回の研究結果は、両剤の併用療法が、診療ガイドラインで推奨されている2型糖尿病患者の転帰をさらに改善することを裏付けるものだ」としている。

GLP-1受容体作動薬は肥満関連がん(OAC)
のリスク低下と関連

 2型糖尿病患者にGLP-1受容体作動薬を使用すると、インスリンやメトホルミンと比較して、13種類の肥満関連がん(OAC)のリスクが低下することが、米ケース ウェスタン リザーブ大学による米国の電子医療記録(EHR)の全国多施設データベースにもとづく、160万人超の患者を対象とした後ろ向きコホート研究で示された。研究成果は、「JAMA Network Open」に掲載された。

 研究グループは、米国の約1億1,300万人の患者の電子医療記録(EHR)の全国多施設データベースの2005年3月~2018年11月のデータに含まれる、GLP-1受容体作動薬、インスリン、メトホルミンを処方された2型糖尿病患者165万1,452人(平均年齢 59.8歳、男性 50.1%)のデータを解析した。

 基準曝露後の15年間の追跡期間中に発生した肥満関連がんの初回診断について、Cox比例ハザードモデルおよびカプラン マイヤー法を用いて解析した。

 その結果、GLP-1受容体作動薬はインスリンと比較して、胆嚢がん[HR 0.35、95%CI 0.15~0.83]、髄膜腫[HR 0.25、95%CI 0.15~0.83 および HR 0.37、95%CI 0.18~0.74]、膵臓がん[HR 0.41、95%CI 0.33~0.50]、肝臓がん[HR 0.47、95%CI 0.36~0.61]、卵巣がん[HR 0.52、95%CI 0.03~0.74]、大腸がん[HR 0.54、95%CI 0.46~0.64]、多発性骨髄腫[HR 0.59、95%CI 0.44~0.77]、食道がん[HR 0.60、95%CI 0.42~0.86]、子宮内膜がん[HR 0.74、95%CI]、胃がん[HR 0.73、95%CI 0.51~1.03]のそれぞれのリスク減少と関連することが示された。

 なお、メトホルミンと比較すると、GLP-1受容体作動薬はすべてのがんのリスク低下と関連していなかったが、腎臓がんのリスク増加と関連していた[HR 1.54、95%CI 1.27~1.87]。

Combining popular diabetes drugs offers complementary heart and kidney benefits (ジョージ国際健康研究所2024年7月8日)
SGLT2 inhibitors and GLP-1 receptor agonists: the definitive combination? (Lancet Diabetes & Endocrinology 2024年7月8日)
Glucagon-like peptide 1 receptor agonists and 13 obesity-associated cancers in patients with type 2 diabetes (JAMA Network 2024年7月5日)
Glucagon-Like Peptide 1 Receptor Agonists and 13 Obesity-Associated Cancers in Patients With Type 2 Diabetes (JAMA Network Open 2024年7月5日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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