GLP-1受容体作動薬「セマグルチド」 米国で抗肥満薬の承認後に需要が急拡大 FDAが注意喚起
FDA、セマグルチドを含む未承認の薬剤に関する注意を喚起 米食品医薬品局(FDA)は5月31日、2型糖尿病治療や減量目的のためにセマグルチドを使用している患者は、どこで薬を入手するかに注意する必要があるとする警告を発出した。安全性や有効性、品質が保証されていない製剤が流通しており、承認済みのセマグルチドとは異なる成分が使われている薬剤が流通している可能性もあるとしている。
GLP-1受容体作動薬のセマグルチドは、現在、FDAにより以下の3タイプが承認されている。血糖降下および心血管疾患のリスク抑制目的で使用可能な注射剤のオゼンピック、経口血糖降下薬のリベルサス、および、肥満にともなう合併症のある場合の減量目的で使用可能な注射剤のウゴービ。これらはいずれも処方箋が必要な薬剤。
一方、一定の条件の下で、薬局が薬剤の調合や調整(drug compounding)を行うことは認められている。例えば、薬剤に添加されている成分にアレルギーのある患者用にその成分を使わない薬剤を調合・調整したり、製造されている剤形が患者に適さない場合にほかの剤形に変更したりすることは可能。
また、流通量が足りずにFDAの不足医薬品リストに掲載された場合には、米国連邦食品・医薬品・化粧品法の要件を満たすことを条件に、不足薬剤のコピー製品の製造・流通上の制限が緩和される。ただし、そのように作られた配合剤(compounded drug)は、安全性や有効性に関するFDAの検証を受けていない。
セマグルチドは、減量目的での使用承認後に需要が急拡大し品薄状態となって、2023年5月時点でFDAの不足医薬品リストに掲載されており、調合・調整によって作られた配合剤が流通している。FDAによると、それらの配合剤を使用した一部の患者から、使用後に何らかの問題が発生したという報告があるという。
FDAは、承認された薬剤が入手できる状況であれば、患者は配合剤を使用すべきではないと警告している。また、患者だけでなく医師に対しても、そのような配合剤はFDAが安全性、有効性、品質の審査を行っていないことを理解する必要があるとしている。
さらに、そのような配合剤に、セマグルチドナトリウムやセマグルチド酢酸塩など、原薬として塩形態のセマグルチドが使用されている可能性を指摘した報告もあるという。塩を原薬形態とするセマグルチドは、承認済みのセマグルチドとは異なる成分。この事態に対してFDAは、連邦薬事委員会連合(NABP)に対し、塩形態のセマグルチド配合剤を調合・調整することに関する懸念を表明した。
FDAは、セマグルチドの使用を予定している患者は、認可を受けた医療提供者から処方箋を受け取り、認可を受けた薬局や施設からのみ、医薬品を入手すべきだとしている。また、それ以外のルートで入手する場合、潜在的に安全ではない製品を手にするリスクを理解しておくべきだとも警告している。
加えて医療従事者に対しては、薬局などでの薬剤の調合や調整の際に、原薬が塩形態のセマグルチドが使用されている可能性にも注意すべきと指摘している。
[HealthDay News 2023年5月31日]
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