【新型コロナ】コロナ患者の入院時の腎機能障害とその重症度が急性期の予後不良因子に 国内8施設のコロナ患者500人を調査
コロナ入院患者の34.2%に腎機能障害
研究は、横浜市立大学附属市民総合医療センター心臓血管センター内科の佐藤亮佑氏(ゲッチンゲン大学留学中)、松澤泰志講師、日比潔准教授、木村一雄客員教授、横浜市立大学大学院医学研究科循環器・腎臓・高血圧内科学の田村功一主任教授、東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科の坪井伸夫准教授、横尾隆教授、埼玉医科大学腎臓内科の岡田浩一教授らの研究グループによるもの。研究成果は、日本腎臓学会誌「Clinical and Experimental Nephrology」に掲載された。
2021年10月時点で480万人以上が新型コロナにより死亡しており、新型コロナ患者の重症化・重篤化に関連する因子を特定することは非常に重要だ。
一方、腎機能障害は、肺炎や尿路感染症などのさまざまな感染症の重症度や予後に影響する因子であり、新型コロナ患者の腎機能障害の有無を把握しておくことは、その後の重症化リスクを判断するのに役立つと考えられる。
そこで研究グループは、厚生労働科学特別研究事業「Post-corona/with-corona時代での持続可能な腎臓病診療・療養の堅牢な体制構築」(研究代表者:川崎医科大学副学長/腎臓・高血圧内科学主任教授 柏原直樹)による研究として、新型コロナの入院時の段階での腎機能障害が、その後の重症化や急性期死亡率の上昇と関連するかどうかを検討した。
研究は、横浜市立大学附属市民総合医療センター、東京慈恵会医科大学附属病院、埼玉医科大学病院、横浜市立大学附属病院を含めた国内8病院に新型コロナ感染症で入院した500人(平均年齢51歳)を対象に、2020年2月5日~12月31日に行われた。
研究での腎機能障害の定義を、入院時の推定糸球体濾過量の減少(eGFR<60mL/min/1.73m²)またはタンパク尿(尿定性法1+以上)とした。主要評価項目は院内死亡、ECMOおよび人工呼吸器の使用、ICU入室の複合条件とした。
その結果、171例(34.2%)の患者に入院時の腎機能障害が認められ、主要評価項目は60例(12.0%)で観察された。腎機能障害のある患者はない患者に比べ、主要評価項目が有意に多く発生し(25.2% vs 5.2%)、多変量解析の結果でも入院時の腎機能障害は主要評価項目の発生増加と有意に関連した。
また、入院時の腎機能障害の程度やタンパク尿の有無と主要評価項目の発生頻度との間には有意な関連性が認められた。
新型コロナ患者の腎機能評価がその後の重症化の判断に役立つ
これまでに、横浜市立大学大学院医学研究科循環器・腎臓・高血圧内科学教室では、2020年2月1日~5月1日に、循環器・腎臓・高血圧内科学教室関連の神奈川県内の6医療機関(横浜市立大学附属市民総合医療センター、神奈川県立循環器呼吸器病センター、藤沢市民病院、神奈川県立足柄上病院、横須賀市立市民病院、横浜市立大学附属病院)に入院した、新型コロナ感染症患者151人を対象に、新型コロナの病態に影響を与える背景や要因を解析するための、多施設共同後ろ向きコホート研究(Kanagawa RASI COVID-19研究)を、臨床アウトカムを検討した日本での最初の研究として行っている。
その結果、▼高齢(65歳以上)、▼心血管疾患既往、▼糖尿病、▼高血圧といった要因が、重症の肺炎と関連があることを明らかにするとともに、レニン-アンジオテンシン系阻害薬が、新型コロナ感染症の重症化を予防する可能性も明らかにした。
今回は、厚生労働科学特別研究事業として、前回のコホート研究の参加施設に加えて、東京慈恵会医科大学附属病院、埼玉医科大学病院も参加し、より多くの新型コロナ感染症患者を対象に解析を行った。
「今回の研究により、新型コロナ患者での初期の腎機能評価がその後の重症化の判断に役立つことが期待されます。また、Post-corona/with-corona時代でも、生活習慣病からの堅牢な診療体制構築を含めた、包括的腎臓病対策の重要性があらためて示されたと考えられます」と、研究グループでは述べている。
横浜市立大学大学院医学研究科循環器・腎臓・高血圧内科学教室
Chronic Kidney Disease and Clinical Outcomes in Patients with COVID-19 in Japan (Clinical and Experimental Nephrology 2022年6月3日)