SGLT2阻害薬とACE阻害薬/ARBの併用で非糖尿病CKD患者の予後が大幅改善する可能性
CKDは糖尿病患者に好発するが、約半数は非糖尿病患者が占めている。非糖尿病CKD患者での治療介入効果に関する臨床試験でのエビデンスは、糖尿病のあるCKD患者を対象としたものに比較して十分とは言えない。またCKDの腎転帰や生命予後への治療介入効果を検証するには、極めて長期にわたる臨床研究を行う必要があり、そこから得られるエビデンスを現在治療中の患者へ適用する機会が限定されてしまうという課題がある。そこでVart氏らは統計学的手法を用いて、アルブミン尿陽性の非糖尿病CKD患者にRASiとSGLT2iを併用した場合の有効性を推定した。RASiとSGLT2iはいずれも、単剤で使用した場合の腎保護効果のエビデンスが確立している薬剤。
基礎データとして、RASi関連ではラミプリルで介入した「REIN研究」とベナゼプリルで介入した「広州研究」のデータ、SGLT2iについてはダパグリフロジンで介入した「DAPA-CKD研究」のデータ、および米国の多施設共同長期観察コホート研究である「CRIC研究」のデータが用いられた。主要評価項目は、血清クレアチニンの倍化、腎不全(eGFR15mL/分/1.73m²以下、透析導入、腎移植)への移行だった。
確立されている統計学的手法による間接比較の結果、RASiとSGLT2iの併用による主要エンドポイント発生率は、無治療に対して65%有意に抑制されると計算された〔推定ハザード比(HR)0.35(95%信頼区間 0.30~0.41)〕。年齢50~75歳では、主要エンドポイントに至らずに生存し得ると推定される期間が、併用療法では17.0年(同12.4~19.6)、無治療では9.6年(8.4~10.7)であり、イベントフリー生存期間が7.4年(6.4~8.7)延長すると推測された。
また、複数の薬剤を服用するという設定から、そのアドヒアランスが不良であった場合を想定した検討でも、イベントフリー生存期間は5.3年(4.4~6.1)から5.8年(4.8~6.8)の範囲の差が生じると見積もられた。なお、主要評価項目に含まれているエンドポイントの発生を1件抑制するために必要な介入件数(NNT)は4~6の範囲と計算された。
以上をもとに著者らは、「アルブミン尿を呈している非糖尿病のCKD患者に対する、RASiとSGLT2iの併用療法の効果は相加的であり、たとえアドヒアランスが低下したとしても、腎不全を回避し生存し得る期間を大幅に延長すると考えられる」と結論付けている。また、考察として、両剤の腎保護作用がそれぞれ異なる経路を介して発揮されることが、相加的な効果発現につながるのではないかと述べている。
なお、数人の著者が製薬企業との金銭的関係の存在を明らかにしている。
[HealthDay News 2022年11月29日]
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