メトホルミン治療とインスリン治療での骨折リスクの比較
糖尿病は骨折のリスク因子であることが知られている。ただし、血糖降下薬がそのリスクに影響を及ぼすのか否か、および、血糖降下薬のタイプによってその影響が異なるのか否かは明らかになっていない。Kong氏らはこの点について、リアルワールドデータを用いた解析によって検討した。
解析対象は、2008~2012年の患者データのうち、1年以上にわたり同一の血糖降下薬が処方されていた50歳以上の2型糖尿病患者6,694人(平均年齢65.8歳、女性47.7%)。追跡期間6.1年(中央値)で、主要骨粗鬆症性骨折(major osteoporotic fracture;MOF)が1,000人年当たり8.36件、大腿骨頚部骨折が同1.53件発生していた。
骨折リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、BMI、HbA1c、骨折の既往、続発性骨粗鬆症、関節リウマチ、心血管疾患、脳血管疾患、認知症、慢性腎臓病など)を調整後の解析で、インスリンが用いられている患者はメトホルミンが用いられている患者に比較し、MOF〔ハザード比(HR)1.96(95%信頼区間1.28~3.02)〕、および大腿骨頚部骨折〔HR3.06(同1.21~7.77)〕のリスクが高いことが明らかになった。
ただし、インスリンとメトホルミンが併用されている場合は、インスリンを用いずにメトホルミンで治療されている患者とのリスク差が有意でなかった〔MOFはHR1.32(同0.77~2.27)、大腿骨頚部骨折はHR2.68(同0.56~12.8)〕。また、サブグループ解析からは、インスリンが用いられている患者の中で、HbA1cが7%未満であって血糖管理が良好な患者、またはBMI25未満の非肥満患者で、メトホルミン処方患者より骨折リスクが有意に高いことが示された。
これらの結果を基にKong氏は、「リアルワールドデータの解析から、インスリンにより血糖管理されている2型糖尿病患者はMOFや大腿骨頚部骨折のリスクが高いことが分かった。しかし、インスリン単独ではなく、メトホルミンと併用している場合のリスクは、メトホルミンで治療されている患者と有意差がなかった。また、インスリンを用いて血糖値が良好に管理されている非肥満の糖尿病患者は、骨折リスクが高い可能性がある」と総括している。
なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。
[HealthDay News 2022年6月17日]
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