活動量計を用いたセルフモニタリング介入は要支援高齢者にも有用 身体活動を改善し介護予防に 健康関連QOLも上昇 神戸大学

2024.03.07
 神戸大学は、要支援高齢者を対象に、活動量を記録できる加速度計を用いたセルフモニタリング介入が、歩数・座位行動・軽強度活動といった身体活動を改善するのに有用であることを明らかにした。

 「移動能力や活動性が低下している要支援高齢者にとって、セルフモニタリング介入による歩数促進は、理解しやすく、座位行動減少のために役立ち、高い身体機能も必要としない」と、研究者は述べている。

 「今後、加速度計を用いたセルフモニタリング介入が要支援高齢者の介護予防方略に組み込まれることで、要支援から要介護に移行する高齢者が減少することが期待される」としている。

活動量計を用いたセルフモニタリング介入が要支援高齢者の身体活動を改善

 神戸大学は、要支援高齢者を対象に、活動量を記録できる加速度計を用いたセルフモニタリング介入が、歩数・座位行動・軽強度活動といった身体活動を改善するのに有用であることを明らかにした。

 身体活動は、心臓病・糖尿病・骨粗鬆症・脳卒中などのさまざまな疾患発症と関連しており、とくに身体機能が低下している要支援高齢者では、身体活動が低下することで健康リスクが高くなるため、身体活動の維持・改善に向けた方策は重要な課題となっている。

 加速度計を用いたセルフモニタリング介入は、身体活動を改善させる方策のひとつだが、要支援高齢者への有効性を検証した研究はこれまでなかった。研究グループは今回、要支援高齢者を対象に検証を行い、その有効性をはじめて示した。

 セルフモニタリング介入したグループは、介入しなかったグループに比べて、歩数が1367.8歩から1682.7歩に増え、座位行動(分/日)が547.4分から523.3分に減り、軽強度活動(分/日)が276.6分から293.0分に増えるなど、身体活動の改善がみられ、要支援高齢者での有効性が示された。

 「今後、加速度計を用いたセルフモニタリング介入が要支援高齢者の介護予防方略に組み込まれることで、要支援から要介護に移行する高齢者が減少することが期待される」と、研究者は述べている。

 研究は、神戸大学大学院保健学研究科の北村匡大氏(令和健康科学大学リハビリテーション学部理学療法学科)、井澤和大准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「European Geriatric Medicine」に掲載された。

活動量計を用いたセルフモニタリングにより歩数・軽強度活動が増加し、座位行動は減少

 高齢者の歩数や座位行動といった身体活動は、疾病および死亡リスクと関連する。身体活動の促進は、心臓病・糖尿病・整形外科疾患・脳卒中などの疾患を予防するだけでなく、健康関連QOLや健康全般を改善するためにも推奨されている。とくに要支援高齢者は、健康な高齢者よりも身体活動が低下している。

 セルフモニタリングは、目標設定・自己管理・フィードバックで構成される行動変容技法のひとつであり、身体活動の促進や血糖値の調整に用いられている。加速度計を用いたセルフモニタリングの身体活動への効果は、健康高齢者、脳卒中や心臓病などの入院患者、糖尿病などの慢性疾患のある患者を対象としたランダム化比較試験で有効性が報告されている。

 しかし、これまで要支援高齢者を対象に身体活動に焦点をあてた効果的な介入プログラムの検証はほとんど行われておらず、また加速度計を用いたセルフモニタリング介入が、要支援高齢者の身体活動および健康関連QOLに与える影響については明らかにされていなかった。

 そこで研究グループは今回、被検者ブラインドのランダム化比較試験を行った。2022年10月~2023年1月にデイサービスでリハビリテーションを受けた利用者106例を登録し、65歳以上・要支援者・歩行可能な者を対象とし、研究の参加に同意の得られた52例を、ランダム化により介入群 26例、介入なしの対照群 26例に振り分けた。

 介入群へは5週間のフォローアップにより、(1) 加速度計、パンフレット、カレンダーを渡し、(2) 身体活動の教育を受けてもらい、(3) 歩数と座位行動の目標を設定し、(4) 歩数と座位行動時間をカレンダーに記載してもらい、(5) 週に1回のフィードバックを受けてもらった。

 対照群へは、(1) 加速度計、パンフレット、カレンダーを渡し、(2) 身体活動の教育を受けてもらったが、カレンダーの記録にもとづくフィードバックは行わなかった。

 データの得られた介入群24例と対照群23例で解析した結果、介入群は対照群と比較して歩数・軽強度活動が増加し、座位行動が減少を示した。しかし、健康関連QOLに有意差は認められなかった。

活動量計を用いたセルフモニタリングにより
歩数・軽強度活動が増加し、座位行動は減少

出典:神戸大学、2024年

セルフモニタリング介入による歩数促進は取り組みやすく、高い身体機能を必要としない

 「本研究の新規性は、要支援高齢者で、歩数と座位行動といった身体活動のセルフモニタリングが、1日の歩数、軽強度活動、座位行動を改善するということを明らかにしたことだ。移動能力や活動性が低下している要支援高齢者で、歩数促進は理解しやすく、座位行動減少のために役立ち、高い身体機能を必要としない行動となる」と、研究者は述べている。

 「今後は、結果の信頼性を向上させ、一般化可能性を拡大できるよう、多施設からの参加者を含めた検証をしたいと考えている。家事、集団スポーツ、ガーデニング、観光など、ウォーキング以外のさまざまな身体活動に焦点を当てて、健康関連QOLへの影響を調査することも重要。さらに、介入後数ヵ月および数年後に参加者を追跡し、身体活動と健康関連QOLの変化を評価し、セルフモニタリング介入の持続的な効果を検証したいと考えている」としている。

神戸大学大学院保健学研究科
Effects of self-monitoring using an accelerometer on physical activity of older people with long-term care insurance in Japan: a randomized controlled trial (European Geriatric Medicine 2024年2月14日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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