血糖管理が不良の2型糖尿病患者はウイルス感染に対する免疫力が40%低下 管理が良好な患者はヘルパーT細胞の機能が回復
血糖管理が不良の2型糖尿病患者はヘルパーT細胞の機能が低下
2型糖尿病患者の高血糖はウイルス感染に対する免疫力の低下と関連することが、中国の香港大学の研究で示された。
研究は、同大学生物医学院のHeidi Ling Guangsheng教授、Paul Lee Chi-ho臨床准教授、Kathryn Tan Choon-beng教授らによるもの。研究成果は、「Cell Metabolism」に掲載された。
2型糖尿病患者は、ウイルス性の呼吸器感染症にかかりやすく重症化しやすいことが知られている。最近の新型コロナのパンデミックでは、2型糖尿病のある新型コロナ患者の死亡リスクは、2型糖尿病のない患者の3倍に上昇し、また2型糖尿病の死亡患者の大半は血糖管理が不十分だったことが報告されている。
人体では通常、主に抗ウイルスT細胞の急速な生成を通じて、ウイルス感染に対する強力な防御力が発揮されるが、研究グループは今回、2型糖尿病患者の40の血液サンプルの検査により、血糖管理が不良の2型糖尿病患者では健康な人に比べて、マクロファージなどを活性化するヘルパーT1(Th1)細胞の機能が40%低下していることなどを明らかにした。
一方で、血糖値が十分に管理されている患者では、Th1細胞の機能は回復していた。抗ウイルス免疫を強化するうえで血糖管理を効果的に行う重要性があらためて示された。
血糖管理が良好な2型糖尿病患者はT細胞の機能不全の有害な影響を受けない
研究グループは今回、管理不良の2型糖尿病の患者の血糖上昇が、どのようにして抗ウイルス反応を悪化させるのかを明らかにするため、2022~2023年に香港のクイーン メアリー病院の2型糖尿病患者から採取した血液サンプルを検査した。
さらに、免疫細胞の培養と動物モデルを使用した実験により、血糖値の上昇によりCD4+T細胞の代謝が損なわれることも実証した。これにより、Th1細胞への機能的な発達に必要な主要な転写因子が劣化し、ウイルスなどの病原体に対する効果的な反応能力が低下するという。さらに、この障害により慢性的な炎症反応が引き起こされ、免疫系がさらに損なわれ、さまざまな健康リスクが引き起こされる。
香港の成人の10人に1人が罹患している2型糖尿病の薬物療法は進歩しているが、依然として多くの患者が最適な血糖管理を達成できていない。
「研究結果は、血糖管理の重要性を強調するものだ。血糖管理が良好な2型糖尿病患者は、T細胞の機能不全の有害な影響を受けないことも確認した。薬物療法の継続と治療計画の厳格な遵守の重要性があらためて示された」と、Guangsheng教授は述べている。
「強力な免疫システムは、ウイルス性感染症のパンデミック時に医療負担を軽減し、命を守るために不可欠だ。高血糖によるCD4+T細胞の機能不全のメカニズムを特定することで、2型糖尿病患者の免疫力を改善するための新しい治療オプションを開発できる可能性がある」としている。
「これらの知見は、新型コロナによる重篤な症状を経験するリスクが高く、インフルエンザやその他の呼吸器感染症に対する感受性の高い2型糖尿病患者にとってとくに重要となる。2型糖尿病患者にとって、血糖管理をより良く理解し、自身のHbA1c値について認識し、薬物療法を遵守し、健康的なライフスタイルを維持することが、致命的な合併症や感染症から身を守るためにもっとも効果的な方法だ」と、Chi-ho臨床准教授は述べている。
HKUMed research finds high blood glucose weakens immunity against viral infections in type 2 diabetes patients (香港大学 2024年12月16日)
Hyperglycemia-triggered lipid peroxidation destabilizes STAT4 and impairs anti-viral Th1 responses in type 2 diabetes (Cell Metabolism 2024年12月3日)