【米国糖尿病学会2023】2型糖尿病とアテローム性動脈硬化症の診療連携により推奨治療の導入が促進 多面的な介入が重要
専門医と診療所の連携により2型糖尿病と心臓病の推奨治療が促進
アテローム性動脈硬化症(ASCVD)は一般に心臓病として知られており、米国だけでも2型糖尿病患者の最大3分の2が生涯でASCVDを発症するとみられている。
ASCVDは、一般集団に比べて糖尿病患者の健康転帰の悪化と関連しているが、2型糖尿病の成人の心臓病リスクを軽減するためのエビデンスにもとづく治療法が、臨床診療で十分に活用されていない現状がある。
米デューク大学などの研究グループは、2型糖尿病の成人の両疾患の治療に役立つように設計された、エビデンスにもとづく3つの推奨治療を導入。評価・教育・フィードバックと、通常のケアの調整された多面的な介入の効果を検証した。
ランダム化臨床試験では、全米の43の心臓病専門の診療所で、1,049人の参加者(20の介入診療所で459人、23の通常ケア診療所で590人)が登録された。
年齢の中央値は70歳で、女性は338人(32.2%)、黒人は173人(16.5%)、ヒスパニック系は90人(8.6%)だった。
2型糖尿病とアテローム性動脈硬化症(ASCVD)に対し、3つの推奨療法を設定した。主要アウトカムは、登録後6ヵ月~12ヵ月の時点での推奨療法の3つのすべてを処方した患者の割合とした。
(1) 高強度スタチン
(2) アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬あるいはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)
(3) SGLT2阻害薬および/あるいはGLP-1受容体作動薬
その結果、協調的なケア介入が、高リスク患者が受けるケアの質を大幅に改善できることが示された。前回のフォローアップでは、介入群の患者は、標準治療群と比べて、3つの推奨クラスすべてを処方される可能性が4.38倍高かった。
介入群では計37.9%が3つのクラスのすべてを処方されていたのに対し、標準治療群では14.5%にとどまった。とくに、介入群の患者は、SGLT2阻害薬および/あるいはGLP-1受容体作動薬を処方される可能性が3倍以上高かった。
さらに同試験は、臨床転帰の差を検出するようには設計あるいは検出されていなかったが、介入群の457人中23人(5%)と通常のケア群の588人中40人(6.8%)が、心筋梗塞、脳卒中、非代償性心不全、緊急血行再建術による全死因死亡あるいは入院の複合転帰を経験した(相対リスクは21%減少し、統計的な有意差はなかった)。
「2型糖尿病と心臓病の患者が適切な治療を受けることは、その治療と予防にとって非常に重要だが、実際に必要な治療を受けられている患者の数にはまだ大きなギャップがある」と、デューク大学医学部臓病学のNeha Pagidipati氏は言う。
「今回の研究では、地域の障壁を評価し、専門医と診療所での連携を調整するなどの多面的な介入を提供することが、2型糖尿病とASCVDの両方の患者に対し、効果的であることが証明されている推奨治療の処方を増やすのに役立つことが示された」としている。
「全国の診療所で協調的な介入を実施することで、患者のケアと転帰が改善される可能性が高い」と指摘している。
第83回米国糖尿病学会(ADA)年次学術集会
New Study Shows a Coordinated Care Approach Significantly Improves Quality of Care for Patients with Type 2 Diabetes and Heart Disease (米国糖尿病学会 2023年6月26日)