SGLT2阻害薬と食事のカロリー制限の併用により2型糖尿病の寛解率が1.5倍超に上昇 糖尿病寛解のための実用的な戦略が必要
SGLT2阻害薬と食事の中程度のエネルギー制限(1日に500~750kcalの減少)を併用すると、2型糖尿病の寛解が1.56倍に増えるという試験結果を、中国の復旦大学などが発表した。
試験には、BMIが25以上で、糖尿病罹病期間が6年未満の、20~70歳の2型糖尿病患者 328人が参加。12ヵ月間で、SGLT2阻害薬群の患者の44%、プラセボ群の患者の28%が糖尿病の寛解を達成した。
「今回の多施設二重盲検ランダム化試験により、SGLT2阻害薬と食事のエネルギー制限を継続する併用療法は、過体重または肥満のある2型糖尿病患者の、糖尿病の寛解、体重減少、代謝リスク因子の改善に効果的であることが示された」と、研究者は述べている。
「SGLT2阻害薬がメトホルミンとともに第1選択薬となることが増えており、今回の研究は、2型糖尿病の寛解を達成し持続するための併用療法についての、さらなる研究の必要性を支持するものだ」としている。
SGLT2阻害薬と食事のエネルギー制限により2型糖尿病の寛解が増加
過体重あるいは肥満のある2型糖尿病の成人を対象に、SGLT2阻害薬の投与と、食事の中程度のエネルギー制限を併用すると、エネルギー制限のみの患者に比較して、2型糖尿病の寛解が1.56倍に増えるという試験結果を、中国の復旦大学などが発表した。
研究は、同大学Zhongshan病院内分泌・代謝科のXiaoying Li教授らによるもので、研究成果は、「BMJ」に掲載された。
2型糖尿病は過体重や肥満と関連が深く、徹底的な体重管理により改善できる症例が多いことが知られているが、低エネルギー食や肥満外科手術などは簡単に実行できるものではなく、効果的な減量方法が求められている。
一方、SGLT2阻害薬は血糖低下作用を介して血糖管理を改善し、体重の減少も認められるが、食事のエネルギー制限との併用による2型糖尿病の寛解に対する効果は、これまでランダム化比較試験では調査されていなかった。
そこで研究グループは、中国本土の16の医療センターで2020年6月~2023年1月に、罹病期間が6年未満の2型糖尿病患者328人を対象に、二重盲検、ランダム化、プラセボ対照臨床試験を実施した。
参加者の年齢は20~70歳で、BMI(体格指数)が25を超えており、メトホルミン以外の血糖降下薬を使用していなかった。HbA1cは6.5%~10%、メトホルミンを服用している患者では10%未満だった。
さまざまな既往症のある患者、胃の手術歴のある患者、減量薬を服用している患者を除外した後で、参加者を中程度のエネルギー制限(1日に500~750kcalの減少)、およびSGLT2阻害薬(ダパグリフロジン10mg/日)あるいはプラセボを投与する群のいずれかに無作為に割り当てた。
参加者全員に試験期間中に、食事に関するカウンセリングを提供し、食事の記録をつけるよう求め、身体活動(毎週150分の早歩き、あるいは1日1万歩以上)を奨励した。
糖尿病の寛解は、血糖降下薬の服用を中止した後、正常な血糖値の維持が少なくとも2ヵ月間持続することと定義した。
その結果、12ヵ月後に、エネルギー制限とダパグリフロジンを併用した群の44%(73/165)が寛解状態になったのに対し、プラセボ群の寛解は28%(46/163)にとどまった[リスク比 1.56、95%CI 1.17~2.09、P=0.002]。
ダパグリフロジン群では体重とインスリン抵抗性も有意に減少し、体重の変化差は-1.3kg[95%CI -1.9~-0.7kg]、インスリン抵抗性(HOMA-IR)の差は-0.8[同 -1.1~-0.4]となった。
ダパグリフロジン群では、体脂肪量、収縮期血圧、コレステロール値などの代謝リスク因子も有意に改善した。有害事象の発生については、2群間に有意差はみられなかった。
構造化された食事プログラムは臨床で実践と実行が可能
「今回の多施設二重盲検ランダム化試験により、SGLT2阻害薬と食事のエネルギー制限を継続する併用療法は、過体重または肥満のある2型糖尿病患者の、糖尿病の寛解、体重減少、代謝リスク因子の改善に効果的であることが示された」と、研究者は結論付けている。
研究者は、この研究にいくつかの限界があることも認めている。たとえば、今回の試験に参加した2型糖尿病患者の罹病期間は6年未満であり、罹病期間が長い患者や他の人種、民族グループの患者に対しては一般化できないことや、総エネルギー摂取量の評価は行っていないことを挙げている。
しかし、「構造化された食事プログラムは、臨床現場で実践可能かつ実行可能であり、参加した2型糖尿病は、SGLT2阻害薬と中程度のエネルギー制限食の組み合わせを遵守していた。さらに分析後も同様の結果が得られ、精査にも耐えられることが示唆された」としている。
「SGLT2阻害薬がメトホルミンとともに第1選択薬となることが増えており、今回の研究は、2型糖尿病の寛解を達成し持続するための併用療法についての、さらなる研究の必要性を支持するものだ」としている。
論説では、この複合戦略は効果的であるにしても、「血糖降下薬は寛解時点で中止すべきか、また2型糖尿病の寛解に対するより個別化されたアプローチに特定の薬物メカニズムを活用できるかなどの疑問も残る」とも指摘されている。
SGLT-2 drug plus moderate calorie restriction achieves higher diabetes remission (BMJ Group 2025年1月22日)
Dapagliflozin plus calorie restriction for remission of type 2 diabetes: multicentre, double blind, randomised, placebo controlled trial (BMJ 2025年1月22日)