糖尿病薬のDPP-4阻害薬に「類天疱瘡」の副作用 PMDAが適切な処置を呼びかけ 投与の中止も

2023.07.28
 医薬品医療機器総合機構 PMDAは、DPP-4阻害薬について「医薬品適正使用のお願い」を公開した。

 糖尿病治療薬であるDPP-4阻害薬の副作用として「類天疱瘡」が知られており、添付文書でも注意喚起が行われている。

DPP-4阻害薬により類天疱瘡が悪化し入院に至った事例を報告

 医薬品医療機器総合機構 PMDAは、DPP-4阻害薬について「医薬品適正使用のお願い」を公開した。

 糖尿病治療薬であるDPP-4阻害薬の副作用として「類天疱瘡」が知られており、添付文書でも注意喚起が行われている。

 しかし、DPP-4阻害薬の投与後に類天疱瘡が発現した患者で、初期症状である皮膚の異常がみられた後も本剤の投与が継続された結果、類天疱瘡の悪化をきたし、入院に至っている事例が報告された。なお、発現までの投与期間は、開始後早期から数年の事例まで、幅広く報告されているという。

 「DPP-4阻害薬の使用中に、そう痒を伴う浮腫性紅斑、水疱、びらん等があらわれ、類天疱瘡の発現が疑われる場合には、速やかに皮膚科医と相談し、DPP-4阻害薬の投与を中止するなどの適切な処置を行うよう、注意をお願いいたします」と、PMDAでは呼びかけている。

 日本皮膚科学会によると、類天疱瘡は、血液中に存在する皮膚の基底膜に対する自己抗体が自己抗原に反応して、皮膚を傷害し、皮膚に水疱を作る病気。

 DPP-4阻害薬の投与後に類天疱が発現した代表的な症例として、70代の男性の例を挙げている。

 シタグリプチン投与開始後、3、4ヵ月目に水疱出現、自然軽快を繰り返し、投与7ヵ月目に水疱が多発し全身に広がり、投与8ヵ月目にクリニック受診。内服薬及び外用薬で治療したが改善せず、皮膚科を受診。水疱性類天疱瘡の診断となり、入院。治療により改善しプレドニゾロン減量の上で、投与9ヵ月目に退院となったが、再度水疱が出現し、水疱形成増悪が確認され、再入院。プレドニゾロンを増量したが改善せず、血漿交換療法を施行。薬剤性の水疱性類天疱瘡が疑われ、シタグリプチンの投与を中止。プレドニゾロンを減量し、シタグリプチンの中止11日後、水疱性類天疱瘡は回復し、退院した。

【国内で販売されているDPP-4阻害薬】

DPP-4阻害薬 販売名 (製造販売元)
アナグリプチン含有製剤 スイニー錠100mg (三和化学研究所)
メトアナ配合錠LD、同配合錠HD (三和化学研究所)
アログリプチン安息香酸塩含有製剤 ネシーナ錠6.25mg、同錠12.5mg、同錠25mg (武田薬品工業)
イニシンク配合錠 (帝人ファーマ)
リオベル配合錠LD、同配合錠HD (帝人ファーマ)
オマリグリプチン マリゼブ錠12.5mg、同錠25mg (MSD)
サキサグリプチン水和物 オングリザ錠2.5mg、同錠5mg (協和キリン)
シタグリプチンリン酸塩水和物含有製剤 グラクティブ錠12.5mg、同錠25mg、同錠50mg、同錠100mg (小野薬品工業)
ジャヌビア錠12.5mg、同錠25mg、同錠50mg、同錠100mg (MSD)
スージャヌ配合錠 (MSD)
テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物含有製剤 テネリア錠20mg、同錠40mg、同OD錠20mg、同OD錠40mg (田辺三菱製薬)
カナリア配合錠 (田辺三菱製薬)
トレラグリプチンコハク酸塩 ザファテック錠25mg、同錠50mg、同錠100㎎ (武田薬品工業)
ビルダグリプチン含有製剤 エクア錠50mg (ノバルティスファーマ)
エクメット配合錠LD、同配合錠HD (ノバルティスファーマ)
リナグリプチン含有製剤 トラゼンタ錠5mg (日本ベーリンガーインゲルハイム)
トラディアンス配合錠AP、同配合錠BP (日本ベーリンガーインゲルハイム)

 なお、「PMDAからの医薬品適正使用のお願い」は、医薬品医療機器法にもとづき報告された副作用感染症症例などのなかから、すでに添付文書等で注意喚起しているものの、同様の報告の減少がみられない事例などについて、医薬品の適正使用推進の観点から医療関係者により分かりやすいかたちで情報提供を行うものとしている。

独立行政法人 医薬品医療機器総合機構

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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