糖尿病治療薬の有効性は年齢により異なる DPP-4阻害薬・SGLT2阻害薬・GLP-1受容体作動薬

2025.02.26
2型糖尿病治療薬の有効性は年齢により異なる

 2型糖尿病に用いられる血糖降下薬の有効性が、患者の年齢や性別により異なるかを検討した結果が「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に2月3日掲載された。英グラスゴー大学のPeter Hanlon氏らの研究によるもので、性別では有効性の違いはみられないが、年齢については薬剤ごとに異なる影響が観察されたという。

 たとえばSGLT2阻害薬(SGLT2-i)は加齢とともにHbA1cの低下幅が小さくなるにもかかわらず、心血管に対する保護効果は高まる可能性があるとのことだ。

 この研究では、比較的新しい2型糖尿病治療薬で、血糖降下以外の副次的な作用のエビデンスも豊富なSGLT2-i、GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)、およびDPP-4阻害薬(DPP-4i)の3剤の有効性が、年齢や性別によって異なるのかを、ネットワークメタ解析で検討した。

 MEDLINE、Embase、米国と中国の臨床試験レジストリを用いて、それぞれのデータベースの開始から2022年11月までに公開された報告を対象に検索を実施。2024年8月に、新たに報告されていた論文を追加した上で解析を行った。有効性の評価項目は、HbA1c低下効果と主要心血管イベント(MACE)抑制効果だった。

 適格と判断された601件の報告のうち、研究参加者個々のHbA1cの変化を確認できた報告は103件だった。

 SGLT2-iは、年齢が30歳上がるごとに対プラセボでのHbA1cの変化量の絶対差(absolute reduction;AR)が、単剤処方では0.24%[95%信頼区間 0.10~0.38]、他剤との2剤併用では0.17%[同 0.10~0.24]、3剤併用では0.25%[同 0.20~0.30]ずつ低下することが分かった。

 GLP-1RAについては同様の解析で、単剤処方ではARが−0.18%[同 −0.31~−0.05]、2剤併用で−0.24%[同 −0.40~−0.07]と、加齢とともにHbA1cの低下幅が大きくなることが示された。

 ただし、3剤併用でのARは0.04%[同 −0.02~0.11]で、加齢によるHbA1c低下作用の有意な変化はみられなかった。

 DPP-4iは、2剤併用ではAR−0.09%[同 −0.15~−0.03]と、わずかに低下幅が大きくなることが示され、単剤[AR −0.08%、同 −0.18~0.01]や3剤併用[AR −0.01%、同 −0.06~0.05]では、加齢による有意な変化はみられなかった。

 研究参加者個々のMACE発生データを入手できた報告は6件だった。SGLT2-iによるMACEリスクの抑制効果は、年齢が30歳上がるごとにより大きくなっていた[ハザード比(HR) 0.76、同 0.62~0.93]。一方、GLP-1RAによるMACEリスクの抑制効果は、加齢にともない低下していた[HR 1.47、同 1.07~2.02]。

 著者らは、「SGLT2-iのHbA1cに対する有効性は加齢とともにわずかに低下するが、対照的に同薬のMACE抑制効果は若年者に比較して高齢者でより大きい」と結論付けている。

 なお、数人の著者が製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を開示している。

[HealthDay News 2025年2月11日]

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