慢性心不全治療薬「ベリキューボ錠」を推奨 心血管死または入院のリスクを低下 欧州心臓病学会
心不全増悪イベント後の心血管死または心不全による初回入院の複合リスクを有意に減少
「ベリキューボ錠」は、心不全の適応症で承認された初の可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激剤。sGCは一酸化窒素(NO)のシグナル伝達経路に重要な役割を果たしており、NOとsGCが結合すると、触媒作用により細胞内の環状グアノシン一リン酸(cGMP)が合成され、セカンドメッセンジャーとして血管緊張や心筋収縮、心臓リモデリングを制御する役割を担う。
NOの産生能低下およびsGC活性低下が、心筋や血管の機能不全の原因と考えられ、心不全との関連が示されている。「ベリキューボ錠」はNOと独立、かつ相乗的にsGCを直接刺激することで、細胞内cGMPの産生レベルを高める。
「ベリキューボ錠」は日本では、「慢性心不全 ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る」を効能・効果として2021年6月に厚生労働省より承認され、同年9月より販売されている。
心不全の既往患者では心不全増悪イベントにより、心不全の兆候や症状が悪化し、治療の強化が必要となる。心不全患者は平均して1年に1回入院し、心不全増悪が起こるたびに心機能は悪化する。心不全増悪イベントの後、患者の56%が30日以内に再入院している。さらに治療の進歩にもかかわらず、心不全と診断された患者の約30%は1年以内に亡くなっている。
欧州心臓病学会(ESC)心不全協会(HFA)で推奨されている4剤併用療法[ARNI / ACE阻害薬、β遮断薬、MR拮抗薬、SGLT2阻害薬]を受けていても、心不全増悪イベントや死亡のリスクは残っており、同剤のような追加治療の必要性が指摘されている。
ESC HFAの新しい臨床コンセンサスステートメントは、同学会が発行した初めての心不全増悪に特化したステートメント。心不全増悪は医療制度にとって大きな負担であり、心不全増悪イベントの発症抑制は心不全治療の重要な目標となっている。
同剤は、ガイドラインで推奨されているほかの治療薬とは異なる作用機序を有し、慢性心不全に対して追加の選択肢を提供するとしている。同剤は、心不全増悪イベント後の左室駆出率が低下した症候性慢性心不全患者の治療に、海外のガイドラインでも推奨されている。
「心不全の増悪は、疾患の進行や入院を繰り返すという負のスパイラルの始まりであり、再発抑制のために患者のケアを再評価する重要な機会となります。今回のESC HFAの新たなコンセンサスステートメントでは、ベルイシグアトがハイリスク患者集団における入院や死亡のリスクを低下させることが臨床データで示されていることから、心不全増悪イベント後の適切な患者にベルイシグアトを用いるべきと評価されています」と、ドイツ・バイエル社では述べている。
ベリキューボ錠2.5mg ベリキューボ錠5mg ベリキューボ錠10mg 添付文書 医薬品ガイド (医薬品医療機器総合機構)