医師主導のオンライン食事支援が糖尿病患者の健康を改善 費用対効果も高く実用的

2025.05.13

 2型糖尿病患者を対象とした、医師主導の食事支援のオンライン介入プログラムは、実用的で費用対効果も高く、患者の健康改善に効果的であることが、責任ある医療のための医師委員会(Physicians Committee for Responsible Medicine)による研究で示された。

 このオンラインの食事支援により、糖尿病治療薬、体重、HbA1c、総コレステロール値、LDLコレステロール値が減少したとしている。研究成果は、「American Journal of Lifestyle Medicine」に掲載された。

医師と栄養士が主導するオンライン栄養介入プログラムは効果が高いことを実証

 「植物性食品中心の食事は、2型糖尿病患者の管理と改善に適していることが、多くの研究で示されているが、臨床医への栄養教育の不足、診察期間の短さ、栄養介入に対する保険適用の範囲の狭さなどの要因により、臨床実践には十分に反映されていない」と、ワシントンD.C.のバーナード医療センターの院長で、内科・ライフスタイル医学の専門医でもあるVanita Rahman氏は言う。

 「今回の研究で、医師と栄養士が主導するオンライン栄養介入プログラムがこれらの障壁を克服し、医療従事者が植物性食品を臨床診療に取り入れ、患者の転帰を改善するのに役立つことを実証した」としている。

 研究グループは、2型糖尿病の成人76人を2023年8月~2024年9月にオンライン栄養介入プログラムに登録した。参加者と医療従事者にとって経済的に実行可能な費用の範囲内で、アクセスしやすく、継続的な栄養教育と支援を提供することを目指した。

 このプログラムの、患者の自己負担額は1人あたり399ドル(約6万円)で、12クラスに分割すると、プライマリケアあるいは専門医による診療の一般的な自己負担額に近くなった。毎週の12回のオンラインクラス、HbA1cおよび脂質値の臨床検査、デジタル体重計、さらに患者向け教育資材の費用が含まれており、保険適用や事前承認の必要はない。

 各60分間のクラスは医師と登録栄養士(RD)が主導し、糖尿病での栄養の役割に関する教育、植物性食品を中心とした食事に関する情報、食料品の買い物・調理・外食に関する実用的なヒント、患者同士が支え合うピアサポートの機会などを提供した。

 参加者全員は、カロリー摂取の制限なしに、全粒穀物、野菜、豆類、果物などからなる低脂肪の植物性食品を中心に摂取し、動物性食品や高脂肪の植物性食品の摂取を最小限に抑えるよう指導された。

 その結果、12週のプログラムを完了した58人の参加者の平均体重は3.7kg(約8ポンド)減少し[95%CI -4.4~-2.9kg、P<.0001]、HbA1cは0.6%低下した[同 -0.8~-0.3%、P=.0001]。

 さらに、脂質降下薬を服用していない参加者では、総コレステロール値とLDLコレステロール値が低下し、参加者の22%が糖尿病薬の服用量を減らした。なお、参加者の平均年齢は63.4歳、女性が69%だった。

 ベースラインで植物性食品が中心の食事を摂取していなかった参加者は、平均体重とHbA1cの減少はより顕著だった。

 「プライマリケアの現場で、2型糖尿病に対する12週間の植物性食品中心のオンラインの食事介入は、アクセスしやすく経済的に実行可能であり、糖尿病治療薬、体重、HbA1c、総コレステロール値、LDLコレステロール値の減少をもたらした」と、Rahman氏は述べている。

 2050年には世界で10億人以上が糖尿病を発症すると予想されているが、オンラインの食事介入プログラムは、臨床医が1度に多くの患者にアプローチでき、増加し続ける糖尿病患者にを教育するための効果的な方法となる可能性がある」としている。

Physician-Led Online Nutrition Intervention Program Is Practical, Cost-Effective, and Successful at Improving Patient Health (Physicians Committee for Responsible Medicine 2025年5月2日)
Feasibility and Efficacy of a Plant-Based Nutrition Intervention for Type 2 Diabetes in a Primary Care Setting (American Journal of Lifestyle Medicine 2025年5月1日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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