SGLT2阻害薬はGLP-1受容体作動薬よりも2型糖尿病患者の心不全リスクを低下
SGLT2iとGLP-1RAはともに、CVDの既往を有する2型糖尿病患者の心血管予後を改善することが、プラセボ対照試験の結果から示されている。Patorno氏らは、これら両薬剤のCVDおよび心不全に対するメリットを比較する以下の検討を行った。
2013年4月~2017年12月の医療保険請求データベースを用い、SGLT2iまたはGLP-1RAにより治療が開始されていた成人2型糖尿病患者から、傾向スコアにより背景因子をマッチさせ、CVD既往のある患者5万2,901人、CVD既往のない患者13万3,139人のペアを作成。評価項目を、心筋梗塞または脳卒中による入院、および心不全入院として、1,000人年当たりのイベント発生率を比較した。
心筋梗塞または脳卒中による入院は、CVD既往のある患者で比較すると、GLP-1RA群に対しSGLT2i群でややリスクが低かった〔ハザード比(HR)0.90(95%信頼区間0.82~0.98)、率差(RD)-2.47(同-4.45~-0.50)〕。CVD既往のない患者では有意差がなかった〔HR1.07(同0.97~1.18)、RD0.38(同-0.30~1.07)〕。
一方、心不全入院に関してはCVD既往の有無にかかわらず、GLP-1RA群に対しSGLT2i群でリスクが低く有意差が認められた。具体的には、CVD既往のある患者ではHR0.71(同0.64~0.79)、RD-4.97(同-6.55~-3.39)、CVD既往のない患者でもHR0.69(同0.56~0.85)、RD-0.58(同-0.91~-0.25)であった。
まとめると、成人2型糖尿病患者において、SGLT2iで治療されていた患者はGLP-1RAで治療されていた患者よりも、CVD既往の有無にかかわらず心不全入院のリスクが低く、CVD既往患者ではより大きな率差が認められた。心筋梗塞や脳卒中による入院に関しては、著明な率差は見られなかった。
著者らは、本研究には試験デザイン上、処方が無作為化されていないという限界があることを述べた上で、「リアルワールドのデータを解析した結果、SGLT2iとGLP-1RAは、2型糖尿病患者のアテローム性動脈硬化に伴うCVD予防についてはほぼ同等のメリットをもたらし、心不全予防についてはSGLT2iの方がより大きなメリットをもたらすことが示唆される」とし、「既存のガイドラインを支持する結果が得られた」と総括している。
なお、数名の著者が製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。
[HealthDay News 2021年9月28日]
Copyright ©2021 HealthDay. All rights reserved.
Photo Credit: Adobe Stock