SGLT2阻害薬はGLP-1受容体作動薬よりも2型糖尿病患者の心不全リスクを低下

2021.10.07
SGLT2iの心不全抑制効果はGLP-1RAを上回る可能性

 SGLT2阻害薬(SGLT2i)はGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)に比較して、2型糖尿病患者の心不全入院リスクをより低下させることを示唆するデータが報告された。米ハーバード大学医学部のElisabetta Patorno氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of Internal Medicine」に9月28日掲載された。SGLT2iの心不全入院に関する優位性は、ベースライン時の心血管疾患(CVD)の有無にかかわらず認められるという。

 SGLT2iとGLP-1RAはともに、CVDの既往を有する2型糖尿病患者の心血管予後を改善することが、プラセボ対照試験の結果から示されている。Patorno氏らは、これら両薬剤のCVDおよび心不全に対するメリットを比較する以下の検討を行った。

 2013年4月~2017年12月の医療保険請求データベースを用い、SGLT2iまたはGLP-1RAにより治療が開始されていた成人2型糖尿病患者から、傾向スコアにより背景因子をマッチさせ、CVD既往のある患者5万2,901人、CVD既往のない患者13万3,139人のペアを作成。評価項目を、心筋梗塞または脳卒中による入院、および心不全入院として、1,000人年当たりのイベント発生率を比較した。

 心筋梗塞または脳卒中による入院は、CVD既往のある患者で比較すると、GLP-1RA群に対しSGLT2i群でややリスクが低かった〔ハザード比(HR)0.90(95%信頼区間0.82~0.98)、率差(RD)-2.47(同-4.45~-0.50)〕。CVD既往のない患者では有意差がなかった〔HR1.07(同0.97~1.18)、RD0.38(同-0.30~1.07)〕。

 一方、心不全入院に関してはCVD既往の有無にかかわらず、GLP-1RA群に対しSGLT2i群でリスクが低く有意差が認められた。具体的には、CVD既往のある患者ではHR0.71(同0.64~0.79)、RD-4.97(同-6.55~-3.39)、CVD既往のない患者でもHR0.69(同0.56~0.85)、RD-0.58(同-0.91~-0.25)であった。

 まとめると、成人2型糖尿病患者において、SGLT2iで治療されていた患者はGLP-1RAで治療されていた患者よりも、CVD既往の有無にかかわらず心不全入院のリスクが低く、CVD既往患者ではより大きな率差が認められた。心筋梗塞や脳卒中による入院に関しては、著明な率差は見られなかった。

 著者らは、本研究には試験デザイン上、処方が無作為化されていないという限界があることを述べた上で、「リアルワールドのデータを解析した結果、SGLT2iとGLP-1RAは、2型糖尿病患者のアテローム性動脈硬化に伴うCVD予防についてはほぼ同等のメリットをもたらし、心不全予防についてはSGLT2iの方がより大きなメリットをもたらすことが示唆される」とし、「既存のガイドラインを支持する結果が得られた」と総括している。

 なお、数名の著者が製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

[HealthDay News 2021年9月28日]

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