アルツハイマー病の病理に作用する初めてかつ唯一の治療薬「ADUHELM」が米国で迅速承認 18ヵ月でアミロイドβプラークを59~71%減少
アミロイドβプラークの脳内蓄積はアルツハイマー病の根本的な原因
「ADUHELM」(一般名:アデュカヌマブ)は、ヒトモノクローナル抗体で、脳内のアミロイドβプラークを減少させることで、アルツハイマー病(AD)の病理に作用するはじめてかつ唯一の治療薬。
「ADUHELM」は、ADの治療を適応症としている。この適応症は「ADUHELM」による治療を受けた患者のアミロイドβプラークの減少にもとづき迅速承認された。
この迅速承認は、臨床的有用性(臨床症状の悪化抑制)の予測可能性が高いバイオマーカーであるアミロイドβプラークの減少に対する「ADUHELM」の効果を実証した臨床試験のデータにもとづくもの。なお、迅速承認の要件として、今後検証試験による臨床的有用性の確認が必要となる。
「ADUHELM」の有効性は、アミロイドの蓄積が確認されたADの初期段階(軽度認知障害および軽度認知症)の患者様を対象とした2つの臨床第3相試験であるEMERGE(試験1)、ENGAGE(試験2)で評価された。また、「ADUHELM」の効果は、プラセボ対照無作為化二重盲検用量設定第Ⅰb相試験であるPRIME(試験3)でも評価されました。
これらの試験で、「ADUHELM」は、一貫してアミロイドβプラークの減少に対する用量依存的かつ投与期間依存的な効果(ENGAGE試験では59%の減少[p<0.0001]、EMERGE試験では71%の減少[p<0.0001]、PRIME試験では61%の減少[p<0.0001])を示した。
「ADUHELM」の安全性プロファイルは、1回以上投与を受けた3,000名以上の患者で確認されている。もっとも多く報告された有害事象は、MRIで観察されるアミロイド関連画像異常(ARIA)だった。ARIA(ARIA-Eおよび/またARIA-H)は、ADUHELM 10mg/kg投与群の41%で、プラセボ群では10%で観察された。
ARIAを生じた患者のうち、ADUHELM 10mg/kg投与群では24%、プラセボ群では5%が症候性であり、もっとも多い症状は頭痛だった。ARIAに関連するその他の症状としては、錯乱、めまい、視覚障害、吐き気などがある。
「ADUHELM」で治療を受けた患者の少なくとも2%で報告され、かつプラセボ投与群よりも2%以上高い頻度で報告された有害反応は、ARIA-E、頭痛、脳表ヘモジデリン沈着、ARIA-H関連表在性せん妄、転倒、下痢、錯乱/せん妄/精神状態の変化/見当識障害だった。
なお、当迅速承認の要件として、今後検証試験による臨床的有用性の確認が必要となる。バイオジェンは「ADUHELM」の臨床的有用性を検証するAD患者を対象とした対照試験を実施する。
「今回のADUHELMの承認は、AD治療における大きな進歩です。ADUHELMは、脳内のアミロイドβプラークを減らすことで、疾患の病理の1つに対処しています。これからは、ADの当事者と医師は、本治療がそれぞれの方の病態に適切であるか判断し選択できるようになります」と、Neurology and the Memory and Aging Program at Butler HospitalのDirectorであるStephen Salloway氏は述べている。
「本日のADUHELMの承認は、この恐ろしい病気を阻止するための戦いにおける革新的な突破口となります。何年にもわたる失望と絶望がありましたが、本承認は多くの家族に新たな希望をもたらし、未来への投資と革新のきっかけとなるでしょう。ADUHELMはADの初期段階の人々を対象としており、米国の医療システム(患者、医療提供者、支払者)が病気の治療における早期発見、診断、薬剤投与に向けた準備ができていることが重要となります」と、UsAgainstAlzheimer'sのChairman and Co-FounderであるGeorge Vradenburg氏は述べている。
「ADUHELM」は、共同開発ライセンス契約にもとづき2007年にNeurimmune社から導入された。2017年10月より、バイオジェンとエーザイは全世界的に「ADUHELM」の開発ならびに製品化を共同で実施している。