減量だけで糖尿病の寛解を維持できる患者はわずか6% 寛解した患者の3分の2は血糖値がふたたび上昇 香港研究

2024.01.31
 2型糖尿病と診断された患者のうち、減量により糖尿病を寛解し、正常な血糖値を維持できている患者はほとんどいないことが、中国の香港中文大学が3万7,326人の香港人を対象に実施した研究で判明した。

 診断後約8年までに減量だけで糖尿病の寛解を維持できていた患者はわずか6%だという。

 ただし、糖尿病と診断されてから1年以内に体重を大幅に減少することは、糖尿病の寛解を達成する可能性の増加と関連していた。

減量だけで2型糖尿病の寛解を持続できる患者は少ない

 2型糖尿病と診断された患者のうち、減量だけで正常な血糖値に到達できる患者はほとんどいないことが、中国の香港中文大学が3万7,326人の香港人を対象に実施した研究で判明した。

 研究は、同大学医学部治療学科のAndrea Luk教授らによるもの。研究成果は、「PLOS Medicine」に掲載された。

 これまで、体重を減らし適正体重を維持すれば、薬を使わずに血糖管理ができるようになる2型糖尿病患者がいることを示唆した臨床試験の結果が報告されているが、現実の診療下で減量により、どれだけの患者が糖尿病の寛解を達成できるかは不明だ。

 そこで研究グループは、新規に2型糖尿病と診断された患者3万7,326人を対象に、集団ベースの観察コホート研究を実施し、どれだけの患者が減量を通じて糖尿病をコントロールできるかを調べた。

 対象となったのは、香港全土で実施されている「糖尿病リスク評価・管理プログラム」(RAMP-DM)に2000年~2017年に登録された患者で、2019年まで追跡して調査した(追跡期間の中央値は7.9年)。

 2型糖尿病の寛解は、6ヵ月以上の間隔をおいて糖負荷なしで2回連続してHbA1cが6.5%未満であり、測定の3ヵ月以上前から血糖降下薬の使用の記録がない場合とした。

 その結果、診断後約8年までに減量だけで糖尿病の寛解を達成した患者はわずか6.1%(2,279人)にとどまり、その発生率は1,000人年あたり7.8人[95% CI 7.5~8.1]だった。

 糖尿病診断時の年齢・性別・評価年・BMI・その他の代謝指標・喫煙歴・飲酒歴、薬物使用を調整した後の、糖尿病寛解のハザード比(HR)は、体重増加のあった患者と比較すると、診断から1年以内に体重が10%以上減少した患者では3.28[95% CI 2.75~3.92、p<0.001]、体重が5%~9.9%減少した患者で2.29[95% CI 2.03~2.59、p<0.001]、体重が0%~4.9%減少した患者で1.34[95% CI 1.22~1.47、p<0.001]だった。

 さらに、寛解を達成した患者でも、3分の2が診断後3年で血糖値が上昇した。中央値3.1年の追跡期間中に、糖尿病の寛解を達成した患者の67.2%(1,531人)がふたたび高血糖に戻り、発生率は1,000人年あたり184.8人[95% CI 175.5~194.0]だった。

 寛解を達成した後で高血糖に戻った患者の、体重増加のあった患者と比較した調整HRは、体重減少が10%以上の患者で0.52[95% CI 0.41~0.65、p<0.001]、体重減少が5%~9.9%の患者で0.78[95% CI 0.68~0.92、p=0.002]、体重減少が0%~4.9%の人は0.90[95% CI 0.80~1.01、p=0.073]だった。

 なお、糖尿病の寛解は、全死因による死亡リスクの31%減少と関連していた[HR:0.69、95% CI 0.52~0.93、p=0.014]。

早期の体重管理介入は糖尿病の持続的寛解の可能性を高める

 「減量だけで糖尿病の寛解を達成した患者が6.1%という結果は、これまで報告されている、診断後1年で最大73%の患者で寛解したとする臨床試験よりも大幅に低いものだ。ただし、最初の1年で体重減少がもっとも大きかった患者は、寛解を維持している可能性も高かった」と、Luk教授は述べている。

 「糖尿病と診断されてから1年以内に体重を大幅に減少することは、糖尿病の寛解を達成する可能性の増加と関連していた。しかし、糖尿病寛解の発生率は低く、寛解した人でも半数は3年以内に高血糖に戻っており、現実の診療環境での糖尿病寛解の持続可能性は低いという結果になった」としている

 今回の研究は、持続的な体重減少による2型糖尿病のコントロールは現実世界で可能ではあるものの、とくに長期的には体重管理だけで正常血糖値を維持できる患者はほとんどいないことを示しているとしている。

 研究者らは、患者は持続的寛解を達成する可能性を高める方法として、早期に体重管理介入を開始する必要性を挙げている。さらに、今回の研究で得られたデータは、早期の体重管理介入が寛解持続の可能性を高め、持続的な生活スタイルの改善がもっとも重要である可能性があることを示唆している。

 過去の臨床試験との相違の理由の1つは、試験参加者が食事の改善、身体運動、メンタルヘルスに対する総合的なサポートを含む、集中的な生活スタイル介入を受けていることだという。

 なお、糖尿病の寛解を定義するために使用したHbA1cの信頼性が、他の病状によって影響を受ける可能性があることや、肥満手術に関するデータが含まれないことを、今回の研究の限界点として挙げている。

People with the most weight loss in the first year were most likely to achieve sustained remission (PLOS 2024年1月23日)
1-year weight change after diabetes diagnosis and long-term incidence and sustainability of remission of type 2 diabetes in real-world settings in Hong Kong: An observational cohort study (PLOS Medicine 2024年1月23日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

糖尿病・内分泌プラクティスWeb 糖尿病・内分泌医療の臨床現場をリードする電子ジャーナル

尿病関連腎臓病の概念と定義 病態多様性 低栄養とその対策
小児・思春期1型糖尿病 成人期を見据えた診療 看護師からの指導・支援 小児がんサバイバーの内分泌診療 女性の更年期障害とホルモン補充療法 男性更年期障害(LOH症候群)
神経障害 糖尿病性腎症 服薬指導-短時間で患者の心を掴みリスク回避 多職種連携による肥満治療 妊娠糖尿病 運動療法 進化する1型糖尿病診療 糖尿病スティグマとアドボカシー活動 糖尿病患者の足をチーム医療で守る 外国人糖尿病患者診療
インクレチン(GLP-1・GIP/GLP-1)受容体作動薬 SGLT2阻害薬 NAFLD/NASH 糖尿病と歯周病 肥満の外科治療 骨粗鬆症 脂質異常症 がんと糖尿病 クッシング症候群 甲状腺結節 原発性アルドステロン症
エネルギー設定の仕方 3大栄養素の量と質 高齢者の食事療法 食欲に対するアプローチ 糖尿病性腎症の食事療法
糖尿病薬を処方する時に最低限注意するポイント(経口薬) GLP-1受容体作動薬 インスリン 糖尿病関連デジタルデバイス 骨粗鬆症治療薬 二次性高血圧 1型糖尿病のインスリンポンプとCGM

医薬品・医療機器・検査機器

糖尿病診療・療養指導で使用される製品を一覧で掲載。情報収集・整理にお役立てください。

一覧はこちら

最新ニュース記事

よく読まれている記事

関連情報・資料