GLP-1受容体作動薬が処方された患者は抗うつ薬を処方されるリスクが高い
GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)の使用が、うつ病や希死念慮などのリスクに関連することを示唆する報告がある。しかし、その関連を否定するデータもあり、依然として決定的なエビデンスはない。
これを背景としてAlmeida氏らは、2012~2022年のオーストラリア医薬品給付制度(PBS)データの10%を占めるランダムサンプルを用いて、GLP-1RAの処方と抗うつ薬の処方との関連性を検討した。
解析対象としたGLP-1RAはエクセナチド、デュラグルチド、セマグルチドとし、人口統計学的因子、および、心血管疾患や不安・不眠症治療目的での薬剤処方の影響は調整した。有意水準は両側検定で1%未満とした。
まず、横断的な解析のため、2022年のPBSサンプルから174万6,391人のデータが用いられた。このうち抗うつ薬が処方されていたのは35万8,075人であり、GLP-1RAが処方されていたのは2万4,783人で、両剤が処方されていたのは8,495人だった。
解析の結果、GLP-1RAの処方は抗うつ薬処方のオッズ比上昇と有意に関連していた[OR 1.44、99%信頼区間 1.38~1.50]。
次に、2012~2021年のGLP-1RAの処方の有無と、抗うつ薬処方の関連を症例対照研究として検討。2022年に抗うつ薬が処方されていた35万8,075人のうち7,558人(2.11%)に対して、過去10年間の前記当該期間にGLP-1RAが処方されていた。
過去のGLP-1RAの処方は、2022年の抗うつ薬処方のオッズ比上昇と有意に関連していた[OR 1.52、同 1.46~1.59]。
続いて縦断的な解析が施行され、2013~2022年のいずれかの時点でGLP-1RAが処方されていた場合、その後に抗うつ薬が処方されるリスクが19%有意に高いことが示された[ハザード比 1.19、同 1.12~1.27]。
年齢層および性別のサブグループ解析により、年齢に関しては30~50代で有意な関連が認められ、性別に関しては男性・女性いずれも有意な関連が認められた。
なお、事後解析から、インスリンの使用も抗うつ薬の使用と関連が認められ、その関連の強さはGLP-1RAと同程度だった。
以上をもとに著者らは、「GLP-1RAが処方された患者は、抗うつ薬を処方されるリスクが有意に高い」と総括している。また、「この研究の結果は、GLP-1RAが処方されている患者のメンタルヘルスを継続的に観察する必要性、および、このトピックに関するさらなる研究の必要性を強調するものだ」と付け加えている。
[HealthDay News 2024年5月15日]
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