月1回投与の「Ziltivekimab」の慢性腎臓病(CKD)対象の第2相試験の結果 アテローム性動脈硬化症関連の炎症バイオマーカーを減少

2021.05.26
 ノボ ノルディスクは、月1回投与の治験薬「Ziltivekimab」(インターロイキン-6(IL-6)モノクローナル抗体)の炎症バイオマーカーに対する効果を評価する無作為割り付け、二重盲検、プラセボ対照の第2相試験である「RESCUE試験」の結果を発表した。
 同試験から、Ziltivekimab投与により、心血管リスクが高い集団である、高感度C反応性タンパク(hsCRP)高値を有し、かつ進行した慢性腎臓病(CKD)患者のアテローム性動脈硬化症に関連する複数の炎症バイオマーカーが有意に減少したことが示された。
 詳細は、5月にバーチャル開催された第70回米国心臓病学会(ACC.21)で発表され、医学誌「Lancet」に掲載された。

IL-6を阻害し全身性炎症を抑えるヒトモノクローナル抗体

 「Ziltivekimab」は、IL-6(アテローム性動脈硬化症の一因となる炎症性サイトカイン)を阻害することで、全身性炎症を抑えるように設計された完全ヒトモノクローナル抗体。同剤は半減期延長技術を利用した製剤であり、皮下注射による月1回の投与が可能だ。

 「RESCUE試験」は、hsCRP値が高く、進行した慢性腎臓病(CKD)患者に対してZiltivekimabを月1回皮下投与し、その炎症バイオマーカーに対する効果を評価する無作為割り付け、二重盲検、プラセボ対照の第2相臨床試験。同試験には264人の被験者が登録され、Ziltivekimabの投与によりアテローム性動脈硬化症に関連する炎症バイオマーカーのレベルを安全かつ効果的に減少させることが可能かどうかを評価した。

 事前に規定された主要評価項目は、投与後12週のhsCRPの変化率であり、その他、24週間にわたって安全性データおよびその他の炎症バイオマーカー(フィブリノゲン、血清アミロイドA、ハプトグロビン、分泌型ホスホリパーゼA2)に関するデータを収集した。

 RESCUE試験では、Ziltivekimab投与群はプラセボ群と比較して、投与後12週でhs-CRP値が有意に減少し、主要評価項目を達成した。hs-CRP値の減少率(中央値)は、プラセボ群の4%に対し、7.5mg、15mg、30mgのZiltivekimab投与群では、それぞれ77%、88%、92%だった。

 また、hsCRP値の減少率が50%以上かつhsCRP値が2mg/L未満を達成した患者の割合(副次評価項目)も、Ziltivekimab投与群がプラセボ群に対し、有意に高いことが示された(プラセボ群の4%に対し、7.5mg、15mg、30mgのZiltivekimab投与群では、それぞれ66%、80%、93%)。

 さらに他の4種類の炎症バイオマーカー(フィブリノゲン、血清アミロイドA、ハプトグロビン、分泌型ホスホリパーゼA2)についても、用量依存的な減少が観察された。

 治療中に発現した軽度、中等度または重度の有害事象は、プラセボ群とZiltivekimab投与群間で、ほぼ同程度だった。Ziltivekimabの忍容性はおおむね良好であり、予期せぬ副作用はみられなかった。

CKD患者の半数がCVD関連合併症で死亡
ASCVDとCKDを有する患者を対象とした抗炎症治療の可能性

 アテローム性動脈硬化症は、心臓発作や脳卒中などの心血管疾患(CVD)の主な原因であり、脂肪やコレステロールをはじめとする物質が動脈壁に蓄積することにより血管の狭窄が生じ、血流が減少する疾患。

 慢性炎症はアテローム性動脈硬化症の発症と進行に寄与する要因であり、hsCRPなどの炎症バイオマーカーにより、心血管リスクを予測することができる。

 CKD患者の約半数が、CVD関連の合併症が原因で亡くなっている。CVDは全世界の死因の3分の1を占め、うち85%が心臓発作と脳卒中によるものだ。すなわち、CKD患者は、末期腎不全への進行以上に、CVDを原因として死亡する確率が高い。

 「今回の成果はアテローム性動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)と慢性腎臓病(CKD)を有する人々を対象とした抗炎症治療の新たな可能性に向けた重要な一歩となります。今回の結果を受け、Ziltivekimabの大規模な第3相心血管アウトカム試験を開始し、その可能性についてさらなる評価を実施する予定です」と、同社では述べている。

 米ブリガム アンド ウィメンズ病院心血管疾患予防センター長のポール M リドカー氏は次のように述べている。

 「RESCUE試験から、Ziltivekimabの投与によりhsCRPを含むアテローム性動脈硬化症に関連する炎症バイオマーカーが有意に減少することが明らかになりました。慢性炎症は、慢性腎臓病患者によくみられ、心臓発作や脳卒中などの心血管イベントのリスクを高めるものです」。

 なお、Ziltivekimabの適応および用量は、2021年5月現在で日本を含めて承認されていない。

ノボ ノルディスク ファーマ
Effects of Interleukin-6 Inhibition with Ziltivekimabon Biomarkers of Inflammation and Thrombosis Among Patients at High Atherosclerotic Risk:A Randomized, Double-Blind Phase 2 Trial(第70回米国心臓病学会 2021年5月)
IL-6 inhibition with ziltivekimab in patients at high atherosclerotic risk (RESCUE): a double-blind, randomised, placebo-controlled, phase 2 trial(Lancet 2021年5月17日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

糖尿病・内分泌プラクティスWeb 糖尿病・内分泌医療の臨床現場をリードする電子ジャーナル

脂質異常症の食事療法のエビデンスと指導 高TG血症に対する治療介入を実践 見逃してはいけない家族性高コレステロール血症
SGLT2阻害薬を高齢者でどう使う 週1回インスリン製剤がもたらす変革 高齢1型糖尿病の治療 糖尿病治療と認知症予防 高齢者糖尿病のオンライン診療 高齢者糖尿病の支援サービス
GLP-1受容体作動薬の種類と使い分け インスリンの種類と使い方 糖尿病の経口薬で最低限注意するポイント 血糖推移をみる際のポイント~薬剤選択にどう生かすか~ 糖尿病関連デジタルデバイスの使い方 1型糖尿病の治療選択肢(インスリンポンプ・CGMなど) 二次性高血圧 低ナトリウム血症 妊娠中の甲状腺疾患 ステロイド薬の使い分け 下垂体機能検査
NAFLD/NASH 糖尿病と歯周病 肥満の外科治療-減量・代謝改善手術- 骨粗鬆症治療薬 脂質異常症の治療-コレステロール低下薬 がんと糖尿病 クッシング症候群 甲状腺結節 原発性アルドステロン症 FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症 褐色細胞腫

医薬品・医療機器・検査機器

糖尿病診療・療養指導で使用される製品を一覧で掲載。情報収集・整理にお役立てください。

一覧はこちら

最新ニュース記事

よく読まれている記事

関連情報・資料