健康診断を3年間以上受けないと2型糖尿病リスクが4.7倍に上昇 受診意欲を高めるプロスペクト理論 国立循環器病研究センター
健康診断を3年間以上受けなかった人は、毎年受けていた人に比べて、2型糖尿病のリスクが4.7倍高く、高リスクに分類された人を対象に行ったシミュレーションで、多くは将来的に透析が必要となる可能性があることが、国立循環器病研究センターなどの調査で明らかになった。早期に糖尿病の治療を開始すれば、透析を回避できることも示された。
研究グループは、「プロスペクト理論」にもとづき、3年間以上健康診断を受けていない人に対して、3回にわたり周知を行った。プロスペクト理論は、人は損失を回避しようとする傾向があり、状況によってその判断は変わるという理論。

健康診断を3年間以上受けなかった人は糖尿病リスクが4.7倍に上昇
将来の透析を回避するためには早期発見と介入が重要
健康診断を3年間以上受けなかった人は、毎年受けていた人に比べて、2型糖尿病のリスクが4.7倍高く、高リスクに分類された人を対象に行ったシミュレーションで、多くは将来的に透析が必要となる可能性があることが、国立循環器病研究センターなどの調査で明らかになった。早期に糖尿病の治療を開始すれば、透析を回避できることも示された。
研究は、国立循環器病研究センター 予防医学・疫学情報部の西村邦宏部長、尾形宗士郎室長、萩原明人客員部長らと、H.U.グループ中央研究所によるもの。研究成果は、「BMC Public Health」に掲載された。
研究グループは、「プロスペクト理論」にもとづき、3年間以上健康診断を受けていない人に対して、3回にわたり周知を行った。1回目は健康診断の内容を紹介し、2回目は健康診断を受けることにともなう特典の付与、郵送検査期間の終了が近づいた3回目には、「郵送検査を受ける機会を失う」という損失を強調する内容の通知を送付した。
プロスペクト理論は、人は損失を回避しようとする傾向があり、状況によってその判断は変わるという理論。たとえば、投資家は利益よりも損失に敏感に反応し、利益が出ている場合は損失回避のために利益の確定をおこない、逆に損失が出ている場合はそれを取り戻そうとして大きなリスクのある取り引きを行う傾向があるというもの。
研究グループは今回、2018年度~2020年度に3年以上1回も健康診断を受診していない40歳以上の国保に加入する市民6,956人を対象に、通常の健康診断の案内に加えて、プロスペクト理論にもとづき健康診断もしくは郵送検査によるセルフチェックの案内を行った。
健康診断を1回以上受診した市民のうち、2021年度も受診した2,664人を加え、受診頻度により4グループに分類して比較した。多重ロジスティック回帰分析を用いて、健康診断の受診頻度と糖尿病に関連する指標(HbA1cおよび推算糸球体濾過率)との関連を評価した。
その結果、3年以上健康診断を受けなかったグループは、毎年健康診断を受けたグループに比べ、2型糖尿病のリスクが高くなった[オッズ比 4.69、95%信頼区間 2.78~7.94]。
さらに、高リスクに分類された39人ついてのシミュレーションを行った結果、32人が将来的に透析が必要となる可能性があり、早期に治療を開始すれば31人は透析を回避できることが示された。
まお対象となった市民のうち、808人が2021年度に健康診断かセルフチェックのいずれかの方法で検診に参加した。

「今回の研究により、長期間検診を受診していない市民のうち、新たに800人以上の健康状態を把握することができました。その結果、3年間以上健康診断を受けなかった市民は、2型糖尿病のリスクが高く、将来の透析を回避するためには早期発見とその後の介入が重要であることが示されました」と、研究者は述べている。
「研究は、糖尿病予防と管理のための新たな知見を示しています。今後はより長期間にわたる健康診断の受診頻度と健康アウトカムの関連性を明らかにしていくことが重要です。また、糖尿病予防のための早期介入プログラムの効果を評価し、地域社会全体での実施を推進することが求められます。さらに、他の地域での研究を通じて、今回の結果が一般化可能かどうかを検証することも必要です」としている。
国立循環器病研究センター 予防医学・疫学情報部
Prevalence of diabetes mellitus and dialysis risk based on annual health checkup frequency among National Health Insurance citizens in Japan (BMC Public Health 2025年4月14日)