米国でチルゼパチドの処方が急増 GLP-1受容体とSGLT2阻害薬も増加
米国でチルゼパチドが承認されて以降、同薬の処方が急増している実態が報告された。2023年12月までに、成人2型糖尿病患者における血糖管理目的での処方薬の12.3%をチルゼパチドが占めるまでに伸長しているという。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のJohn W. Ostrominski氏らの研究の結果であり、詳細は「Annals of Internal Medicine」に4月15日掲載された。

チルゼパチドは、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体およびグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)受容体のデュアルアゴニスト。米国では2022年5月に、2型糖尿病患者の血糖降下薬(glucose-lowering medication;GLM)としてFDAにより承認され、2023年11月には減量薬(weight-lowering medication;WLM)としても承認された。これらのFDA承認後に、GLMやWLMの処方がどのように変化したかはこれまでのところ調査されていない。
これを背景にOstrominski氏らは、米国の大規模商用データベースを用いて、2021~2023年のGLMとWLMに関する保険請求の経時的変化の傾向を分析した。なお、解析対象は成人(18歳以上)への処方とした。また、前年に処方歴がない場合は、その年に新規処方されたものと見なした。
分析の結果、2型糖尿病患者に対するGLMとしてチルゼパチドの処方が急速に増加し、2023年12月までに全GLMの12.3%に達していた。同薬のほかにも、薬剤カテゴリーとして見ると、Na+/グルコース共役輸送担体2(SGLT2)阻害薬が14.5%から24.4%、GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)が19.5%から28.5%へと増加していた。一方でメトホルミンを含むその他のGLMの処方は減少していた。
非糖尿病者に対するWLMとしてのチルゼパチドの処方も、0.0%から40.6%へと増加していた。最も多く処方されていたWLMは、GLP-1RAの一種であるセマグルチドの2.0mg製剤であり、37.8%から45.7%に増加していた。またセマグルチドの2.4mg製剤も、0.0%から32.2%に増加していた。一方で、チルゼパチドやセマグルチド以外のWLMの処方は減少していた。
これらの傾向は、新規処方に限った分析でも同様に観察された。また、チルゼパチド承認後の処方の増加は、他の薬剤の承認後の初期段階で見られた処方増加と比較し、より迅速であり、かつ持続していた。
著者らは、「われわれの研究結果は、米国におけるGLMやWLMの処方状況が、急速に変化している実態を浮き彫りにしている」と述べている。なお、研究の限界点として、分析に用いた商用データベースに含まれていない、民間医療保険非加入者での傾向が不明であり、解釈の一般化が制限されることを挙げている。
[HealthDay News 2025年4月15日]
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